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綾乃さん 第一回 訃報

   

平成27年2月、私が尊敬し、かつて秘かな恋心を抱いた松田綾乃さんが80歳で亡くなった。

最後を看取ってくれた四国の茜病院の佐藤理事長から「松田さんの家族のことで相談したいので、通夜の前に来て欲しい」と電話をもらった。

綾乃さんと知り合って40年以上経つが、家族、しかも息子がいることは初めて聞いた。私はすべての予定をキャンセルし、四国に向かった・・

 

 
第一章 訃報

平成27年2月、冬。寒気はまだまだ緩まず、特に明け方はひどく冷え込んでいた。

「あっ、山口さん?」
「はい、そうですが。」
「茜病院の佐藤です。」

ベッドサイドの時計を見ると午前6時を少し過ぎたばかり。こんな早くに病院から電話があるのは、直感的にいいことではないと思った。

「聞こえますか?」
「はい、すみません。どうかしましたか?」
「松田綾乃さんが、先程、午前5時40分に息を引き取りました・・・」

「松田綾乃」は私の尊敬すべき人で、秘かな恋心を抱いた人でもあった。綾乃さんは長らく四国にある茜病院というところで看護師として働いており、佐藤さんというのはそこの理事長だ。

彼女と最後に会ったのが1年前。

昭和9年、1934年生まれだから、もう80歳にも関わらず現役の看護師として活躍していたが、半年ほど前に風邪を拗らせ入院していた。

「先月電話した時は元気でしたが・・」
「いやあ、先週は随分と持ち直していたんですが、昨日から急に血圧が低下しましてね、あなたに連絡できなくて申し訳ございませんでした。」
「そうですか・・」

私は声が詰まって言葉が続かなかった。

 

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