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道 第十五回 ゆさぶり

   

平成22年3月、雄介は卒業作品が大学買い上げとなる等、優秀な成績で卒業し、大学院に進むことになった。また、ライバルの松森治も1年のアメリカ遊学ですっかり元気になって帰国し、啓子に誘われ絵画教室を手伝うようになった。
さらに、11月、啓子が副島と結婚。耕三の周囲は幸せに包まれていた。
しかし、平成23年の秋、好事魔多しと言うか、耕三の過去を中傷する怪文書が差出人不明のまま美術関係者宛に送られてきた。かつて大雅会を解散に追い込んだ「模写横流し・贋作事件」の黒幕が耕三で、今なお「美術界の闇将軍」として君臨しているとする内容のものだった。
啓子はその事実無根と憤るが、啓子の夫、副島は「怪文書にはペンの力で対抗」と知り合いの記者田村に協力を要請した。

 

第二十四章 大学院進学

平成22年3月、4年はあっと言う間に過ぎ、卒業作品が大学買い上げとなる等、雄介は着実に技量を磨き、大学院に進むことになった。

「雄介君が大学院生か、早いものね。」
「ははは、世間知らずの小僧もなんとか大学院に進むことが出来ました。まあ、本当の修行はこれからですけど。」

啓子がクスクスと笑った。

「なんか可笑しいですか?」
「だって『修行』なんて言うんだもん。君もすっかりお父さんに染まっちゃったね。」
「あれ、自分では気がつかなかったけど、やっぱりそうかな、ははは。」

照れ隠しに雄介は頭を二度、三度叩いてみせた。

「啓子先生、聞いてもいいですか?」
「何よ、改まっちゃって。君らしくない。」
「いや、なんか今更聞くのもなんなんだけど、どうして画家になったんですか?」
「ええ!そんなこと聞くの?」

啓子も両手で顔を覆って照れを隠している。

「君と違うから恥ずかしい。」
「僕と違うって?」
「そう、私は君のように『修行』なんて考えたこともなかった。小学生の頃から単に“絵が上手なお嬢さん”がそのまま美大に行って、卒業したら、アメリカでも行ってみようかなって感じだったのよ。」
「じいちゃんは何も言わなかったんですか?」
「何にも言わなかった。『自分で決めなさい』だけ。
 これは君も同じね。」
「はい、同じです。」

 

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