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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイスⅡ 完結編6

   

シンディとリュリュから話を聞き出すシャルルは、五百年前を思い出し、懐かしくなる。

オカルトファンタジー、第二弾!

 

 ティーポットとティーカップを持って、シンディがソファに腰掛けた。
「シャルルも座って。このお茶ね、イギリスから持ってきたの。フランス人のシャルルの口に合うかしら」
 ダージリンの香ばしい匂いが鼻孔を満たした。
「良い香りだ。流石、英国の茶葉だね」
 シャルルは、側にあった自伝を手に取った。
「サクリファイスについて、話そうよ。この本によると、彼等は錬金術によって生まれたモンスターだ。その秘術を薔薇十字団は狙っているみたいだけど、薔薇十字団も結局は不老不死が目的なんだろうか。シンディの意見が聞きたいな」
「私は、そうは思わないわ。だって、薔薇十字団のカサンドラは不老不死が存在すると認めていないもの。研究そのものを、狙っているんじゃないかしら」
「というと?」
「アーロンは、元は薔薇十字団で錬金術について研究していた。その研究の事が、外部に漏れるのを恐れていたのよ。だって、薔薇十字団は正義だから」
 シンディが、思い出したように立ち上がり、本の山の中から一冊の書物を手に取った。ページをぱらぱらと捲り、決まったところでシャルルの前に突き付けた。
「ここを見て! ホムンクルス。これが、目的だったとか」
「ホムンクルス?」
 シャルルが首を傾げた。
「そうよ。サクリファイスは、ホムンクルスなのよ。プロメテウスの火は、アーロンの精液の事を指すんじゃないかしら」
「本には、男性の精液を腐らせたものからホムンクルスは誕生する、と書いてあるだけだけど。それに物語のシャルルは、血液が錬金薬だと書いている」
「だから、アーロンとクレメンティーナがホムンクルスなのよ。ホムンクルスからでないと、サクリファイスは作れない」
「面白いね」
「どう? 私にも、小説が書けそうよ」
 シンディは、得意げに笑った。
「じゃあ、次はクリスチャンローゼンクロイツ論について」
「そうねえ」
 シンディは、手にした書物の別のページを見せた。
「これかしら。錬金術による精神浄化。特別な浴槽に入ることで精神を浄化するとあるけれど、カサンドラ隊は対プロメテウスの火の為に、チャリスの泉の浴槽に入っていた。それが、この錬金術による精神浄化と結びついて結果、クリスチャンローゼンクロイツの魂と同じような効果をもたらした、と」
 シャルルが笑った。
「少し、強引すぎやしないかい?」
「少し強引なくらいの方が、小説っぽくていいじゃない」
 シンディの意見に、シャルルは苦笑した。
「それにしても、シンディは錬金術について詳しいね」
 シャルルが言った後、シンディは暫く黙り込んでいた。妙な間の後、彼女が開陳した。
「私は、自分の事が知りたかった。最初はただの興味だったの。でも、調べるうちに……最近は怖いの」
「どういうこと?」
「私の家では、マリア様の代わりにある紋章を崇めていたの。両親に聞いても、紋章について教えて貰えなかった」
「なぜ?」
「両親も、本当の意味を知らないのよ。だから、私は自分で調べたの。あれは、紋章ではなくヘルメスの杖だった。何か解らない恐怖を覚えて、私は家を飛び出した」
「家を飛び出すほど?」
「そう。逃げないと殺される気がした」
 シンディが、頭を抱えた。
「誰にも、解るはずないもの。家が怖い、だなんて」
 シンディは、シャルルの本を手に持った。
「この本は、本当に恐ろしい本よ。陰謀によって、炎の中で身を焼かれるの。何回も何回も。なんでこんなに、自分の事のように怯えなければならないの?」
 シャルルは確信した。シンディの魂は、過去の全てを記憶していると。運命に抗うことを、願っていると。
「シンディ、よく聞いて。この話は、本当の出来事なんだ。何故なら、この物語は僕が書かせたものだから。君に、協力して欲しい。アーロンを見つけるための手伝いを」
 シンディが立ち上がった。
「シャルル! 最低ね」
 シャルルも立ち上がった。
「そんな話嘘って、子供にだって解る。そんな、優しさ要らない。こんなの、ただの家への反抗だって私は思ってるもの。皆と違うものを信仰してる両親への反発よ」
「シンディ、本当に僕は五百年生きて、君に二回会った。これで三回目だ」
「奥さんがいるのに、口説こうなんて最低。もう、帰って」
 シャルルは、頷いた。
 帰り道、考えた。先ずはシンディを味方にする必要があると。それについては、ロザリーナに相談するしかない。が、果たして彼女はこの程度の情報で満足してくれるんだろうか。シャルルの口から、自然と溜め息が溢れる。
 期待外れね。そんな台詞が聞こえた気がした。
 次はリュリュ。少し重い足を引きずって、シャルルは自宅に向かって足を進めた。

 

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