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歴史・時代

ハヤブサ王 第4章 〜宿命(4)

   

 大王の后となることに戸惑いながらも、大王の命令は絶対だと受け入れるヤタノヒメミコ。愛しい人を、黙って見詰めていなければならないワケノミコ。そして、ついに一人ぼっちになってしまったメトリノヒメミコ。
 一方、高津宮では、謀反人が捕まったと大騒ぎになって…。
 全ては、逃れらない宿命なのか!?

 

「私が、大王様のもとへですか?」
 丸邇(ワニ)氏の族長ヒレフノオオミの話を聞いて、ヤタノヒメミコは愕然とした。傍らで聞いていたメトリノヒメミコも、大きな目をぱちくりと開けて、ヒレフノオオミの顔を見詰めていた。
「な、なぜです、なぜ私が大王様のもとへ」
「大王様のご命令でございます。おめでとうございます」
 ヒレフノオオミは、断ることができないよう、できるだけ威厳をもって答えた。
 断るも何も、大王の命令は絶対である。もはやヤタノヒメミコに選択肢はない。
「でも、大王様にはイワノヒメ様がいらっしゃるはずです。イワノヒメ様は…」
「大王様が何人の妃を持とうと、大王様次第ですので。イワノヒメ様には関係はございません。ただ…」
 イワノヒメは、体調が芳しくなく、紀の国(和歌山県)の湯へ療養のために出立したとヒレフノオオミは語った。
「イワノヒメ様が…、それは、私が宮に入ることを嫌がっていらっしゃるのではないですか?」
 イワノヒメとは、もと義理の姉妹になり、数年間ともに暮らしたことがある。そのときは、本当の姉妹以上によく面倒を見てもらったものだ。その義理の妹と、今度は一人の男の妻になろうとは、イワノヒメでなくても嫌になるであろう。
(私だって、気兼ねだし…)
 が、ヤタノヒメミコの心配をよそに、ヒレフノオオミは言った。
「嫌がるも何も、大王様のご命令ですから」
 それを言われれば、妻はただ従うしかないのだ。
「それに、大王様はヤタノヒメミコ様を后として迎えるとのことです」
「えっ、そ、それでは、イワノヒメ様は?」
 イワノヒメは妃の身分に落ちると聞いて、これではまるで自分が追い出したみたいだとヤタノヒメミコの心はますます塞いだ。
「よろしいですね。明日、ハヤブサ王様がお迎えに上がりますので」
「ハヤブサ王、ワケノミコが?」
 何という皮肉だろう。大王への輿入れに、ワケノミコが迎えに来るなんて。
 大王の命令は絶対だ。適齢期を遥かに越えても、男の誘いは断り続けていたが、こればかりは断りきれない。でも、その迎えに、ワケノミコを寄越すなんて…。
 大王は、ヤタノヒメミコとワケノミコの関係を知っているのか。いや、知りはしないだろう。だとすると、神様も随分罪なことをなさると、ヤタノヒメミコは思った。

 

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