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幻影草双紙75〜饅頭怖い〜

   

 故桂米朝へのオマージュです。

 

 
 私が怖いと思うものですか、さあ、思いつきませんな。
 ずっとこの稼業をやってきて、死ぬことだって平気だと思っていました。
 だから、怖いものなんてありませんよ。
 あなた、怪訝な顔をしてなさる。
 どんなに大ボラ吹いているヤクザでも、本音は違う――。
 本音を言えば死ぬのは怖いにきまっている――。
 いままで取材してきた人たちはみんなそうだった――。
 そんな顔ですな。
 でも、あたしは違う。
 いやいや虚勢じゃありませんよ。
 こんな老いぼれた年寄りが、いまさら虚勢を張ってどうなります。
 もうとっくに組も解散したし、恰好をつける必要なんか、ありませんよ。

 そりゃ、こんな人生でよかったのか、という後悔はありますがね。
 でも、怖いことはなかったですな。
 私が死ぬのを恐れないのは、そう、時代のせいでしょうかね。
 あと数年早く生まれていたら、特攻隊で死んでいた世代ですよ。
 お国のために命を捨てるのは当然だと信じていましたね。
 そういう教育を受けたんですよ。
 ごらんのように、昔から体格に自信はあったし、勉強だって出来ましたよ。
 予科練に入って飛行機乗りになり、さんざん敵をやっつける――。
 最後はアメ公と差し違えてやるんだって燃えていましたね。
 死ぬことが怖いなんて、これっぽっちも思わないですよ。

 

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