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道 第十七回 新旧二つの才能、旅立ちと出直し

   

怪文書への耕三の回答は栗原陽一朗の芸術に対する情熱に敬服するという予想外のものだった。
師の心を知った栗原は柴崎と決別しパリで出直すことを決意したが、引き留める柴崎とは喧嘩別れとなった。
一方、雄介は大学院を首席で卒業し、アメリカに研究員として招かれることになった。
新旧の才能がそれぞれの方法で美を極めるために次の一歩を踏み出す傍ら、耕三は咲に栗原との仲直りを進めたのだ。

 

第二十九章 柴崎との決別

平成24年4月、あれほど満開に咲き誇っていた桜も散り始めていた。

今は殆ど人が訪れることが無くなった自宅で、ウイスキーを飲みながら栗原は週刊誌を見ていた。

「陶芸に自然の美を求める古老」と題する記事には、耕三が土を捏ねる様子や、その質素な暮らしが写真付きで紹介されていた。

記者のインタビューに答え、好きなことは若者が一生懸命に勉強に、絵画に励むこととあり、最後に「芸術を志す若者へのメッセージ」として「私には忘れられない人がいる。それは若き日の栗原陽一朗氏で、彼の絵画に掛ける情熱に今も私は教えられる。だから、彼の絵画展はいつも楽しみにしていた。最近、作品を発表されないので残念である。元気に創作活動に励む姿を見せて欲しい。」と結んでいた。

  師範代、許してほしい

「おい、陽一朗、元気か。」
「なんだ、繁か。」
「なんだとはご挨拶だな。家に引き籠ってばかりいるから激励に来たのにな。」

柴崎は入ってくるなりソファーにどっかりを座ると陽一郎が差し出したウィスキーをあおるように飲み干した。

  こいつとは終わりにしないと、俺も破滅するな

「何を見ているんだ?」

大理石の応接テーブルに広げてあった週刊誌を手に取った。

「これか。善人面しやがって。何が『元気な姿を見せて欲しい』だ。余計なお世話だ。なあ、陽一朗。」

しかし、栗原はそれに答えず、空になったグラスにウィスキーを注いでいた。

 

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