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サクリファイスⅡ 完結編8

   

シンディに協力して貰うため、シャルルは彼女に自らの秘密を明かすことにした。

オカルトファンタジー、第二弾!

 

「ロザリーナは、何処だと思う?」
「イギリスだと思うわ」
「クリスチャンローゼンクロイツの遺骸が発見された場所は?」
「ドイツだと思うけれど、精霊の家。でも、きっとそこでは無いと思う」
「何故?」
 ロザリーナは、ノートを鞄の中に入れた。
「アーロンは、プロメテウスの火である疑いが掛けられていたわ。そして、その研究をされたという噂も聞いた。私達が、サクリファイスであって、サクリファイスが存在し、私達の復讐を彼等は恐れた筈。私達の弱点は聖水であって、カサンドラ隊はチャリスの泉の水を武器にしていた。だから、チャリスの泉が最も近い場所にアーロンは眠らされていると思うの」
 シャルルは弾かれたように、調べていたオカルトスポットの洞窟の場所を確認した。ロザリーナの憶測通り、チャリスの泉からさほど離れていない場所に存在していた。
「やっぱり、アーロンはここにいるのかもしれない」
 シャルルの声が、震えた。
「行ってみる価値は、あるんじゃないかしら。それでダメなら出直せばいいわ。私達には、欠伸が出るくらいに時間があるんですもの」
 シャルルは、頷いた。
「ねえ、ロザリーナ。その前に、相談があるんだ。リュリュはともかく、シンディを連れて行こうと思っている。でも、本人の意志次第な訳だけど」
 ロザリーナが、首を傾げた。
「どういうこと?」
 シャルルは、落ち着いて答えた。
「彼女は、薔薇十字団カサンドラ隊だったわけだ。そして、何度も処刑された。この前、彼女と話をしたんだけれど、シンディは君と出会う前。五百年前の記憶を、僅かに持っている。だから、彼女の協力が必要になるかもしれない。そう思うんだ」
「サクリファイスだって事を、明かすの?」
 シャルルは、押し黙った。暫く間を置いてから、再び続けた。
「どうかな?」
「シンディを連れていく気なら、秘密を明かすことは絶対に必要よ。でも、彼女はそれを受け入れる事が出来るのかしら? もし、それが出来なければ、不幸の連鎖は再び呼び起こされるでしょうね」
「けど、知らなくても不幸の連鎖は何れ始まるように思うんだ」
 ロザリーナは口を詰むんだ。時計の音が、無機質に響く。静まり返った室内に、やがて外からの足音と扉の音が聞こえてきた。ジャネットが、遅くに帰ってきたようだ。
「彼女にしては、珍しい時間のお帰りだ」
 シャルルが、ふと笑い混じりに呟いた。
「そうね」
 ロザリーナも笑い混じりに呟いた。
「もし、今回失敗してもまた連鎖は起こる。何百年後か解らないけど。そうね、少しくらい冒険してみてもいいんじゃないかしら」
「ロザリーナにしては、珍しいね。僕の意見に賛成するなんて」
「賛成なんてしていないわ。ただ、私もたまには人に任せてみたくなっただけよ」
「そうなの?」
「ええ。そんな時代じゃない」
 昔に比べて、平和なのだ。
「ロザリーナとの旅行は、二百年振りだね」
「そうね。といっても、あれが唯一なんだけど」
 二人の声が、重なった。
「「パリへ」」
 シャルルが、笑う。
「あの頃は、大変だった。馬車で、ごとごと揺られながら何日も掛かった。お尻が痛くて、サクリファイスじゃなかったらどうなっていたことか」
「あら。私は、思う存分馬を走らせる事が出来て、楽しかったわ!」
 旅の思い出と呼ぶには少々強引な記憶ではあったが、今になって思い出してみると笑いが溢れた。
「貴族に間違えられたり、シャルルに恋をする人間がいたり。女として生きた方が良かったかもしれないわね」
「酷いな。僕は男だよ、今更女になんかなれないよ。それに、男色にはどうも」
「そんな経験があるのかしら?」
「ないよ!」
 シャルルは、ふと、ダミアンを思い出した。彼との再会も、近いのだろうかと。

 

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