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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<12> 〜モモヨさんと赤えんぴつ〜

   2015年6月19日  

今晩はわたし、百代の一日の終わりと始まりの話。
午前零時に締めをして、それから考えるいろいろなこと。
赤えんぴつはつらつら考える手助けにもなるのよ。
『モモヨさんと赤えんぴつ』へどうぞいらっしゃい。

※注意

演出の都合上赤えんぴつで帳簿を締めていますが、本来はボールペンでないといけません。

 

モモヨさんと赤えんぴつ

 午前零時。
 秒針がかっきり一秒過ぎたらその日の締めをする。
 今日は(っていうかもう昨日なんだけど)ネットの注文が多かったからお客が少なくても助かった。モモヨ文具店のヴァーチャルショップはひっそりこっそり埋もれるようにネットの海をさまよっている。それ相応に人気もあるんだろう。ネットショップでは実店舗に置いてないかなりマニアックな商品を取り扱ってるから。
「さて、締めだ。締め」
 小さい金庫を持って奥の居間に。
「あー……疲れた」
 午前零時を回って居間に入ると、どっと疲れる。仕事といったって土曜日だし、お客さんもあまり多くない。ネットショップは対面じゃないから、これといって疲れる理由もないんだけど……
「でもまあ、疲れるんだよね」
 二十四時間営業が堪えてるわけじゃないんだけど、一日が終わったー! って開放感に包まれるのはやっぱりこの時間だった。これで締めが終わると完全に一日が終わる。
 細身のペンケースから赤えんぴつを取り出すと、先が丸まってた。
 戸棚から小刀を取り出して、新聞紙を広げる。
 その上で、赤えんぴつに刃を当てる。
 鉛筆削り器を取り扱っているのに、うちではもっぱらこの方法だった。
 鉛筆は動かさず、左親指で刃を押すように動かす。
 する、するっと一枚一枚皮がむけるように綺麗になるのだ。
 新聞の上に、朱色の削りかすが飛ぶ。赤じゃないところがまた味があっていい。赤えんぴつというけど、実際は朱色えんぴつだし、書き味も普通の鉛筆より粘っこい。でも、柔らかい朱色が目に優しい。赤ボールペンがしっかり者のお姉さんだとしたら、赤えんぴつはのほほんとした末っ子だと思う。
 今は書き味のいいボールペンも、パソコンソフトもあるんだけど、なんとなく締まらないのでこうして赤えんぴつとボールペンで帳簿に記入している。まあ、確定申告のときはさすがにボールペンだけど。
 わたしが小さい頃は学校で小刀の使い方って教わってたんだけど、たしか事件だか事故だかがあってそのあと禁止された。今は小刀なんか使わない。ろくすっぽ使えない人が大半だろう。

 

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