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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイスⅡ 完結編9

   

イギリスへの道中、出逢ったのはダミアンであった。
三人を待つ運命とは。

オカルトファンタジー、第二弾!

 

 シャルルは、再び彼女の目の前で、今度は腕を切って見せた。やはり、傷口はみるみるうちに塞がってしまうのだ。
「何よ、これ。どんな手品? サクリファイスの真似をして、私を騙して何が面白いの」
 シンディは、泣きながら怒鳴った。
「シンディ、よく聞いて。僕は、正真正銘サクリファイスだ。そして、過去、君に二回会っている。一回目は、五百年前、二回目は、二百年前。君は、以前不思議な夢の話をしてくれただろう。あれは、君の遠い昔の記憶なんだ」
 シンディが、時を止めたようにぴたりと泣き止んだ。
「僕は、五百年前、君に恋をした。僕を化け物と知らずに、君は恋に落ちた。けれど、陰謀によって僕も君も共に炎の中に消されたんだ。今でも、覚えてる。君が僕の近くで燃えていくのを。そして、二百年前。君は再び僕の前に現れた」
「その時の私は、どうだったの?」
 ようやく顔を上げたシンディを、シャルルは笑顔で見据えた。
「あの時は、君と話せなかった。そして、君は再び陰謀によって炎の中に消えていった。僕は、その悲劇を止めたいんだ」
「悲劇? 私は、一体何だったの?」
「君は、薔薇十字団で、対プロメテウスの火、サクリファイス部隊の勇敢な女戦士だったんだよ」
 シンディが、はっとした。
「あの本。あの中に出てくるシンディって」
「そう、君の事だ」
 シンディは、黙ったままシャルルを見ていた。頭の中が、激しく混乱していたのだ。
「シンディ、僕等はこの繰り返される悲劇を止めるため、イギリスに向かう。アーロンが眠っているかもしれない場所を、見つけたんだ。君に覚悟があるなら、僕等と共に来て欲しい」
 シンディは、立ち上がった。
「シンディ、シャワー使って。私のシャツも貸すわ」
 いつの間にか部屋から出てきたロザリーナが、彼女に声を掛けた。シンディは、素直に頷くと、彼女からバスタオルを受け取ってバスルームに入っていった。
「シャルル、焦ってはダメよ。彼女は、まだ状況を飲み込むので精一杯。イギリスの話は、次にしましょう」
「わかったよ」
 翌日夕方。シャルルがカフェに足を運ぶも、シンディは病欠だと店を休んでいた。更に、その日から三日程経っても出勤して来ないので、シャルルは直接シンディのアパートに足を運んだ。
 チャイムを数回鳴らすが、反応が無かった。
「シンディ、居ないのかい? また来るよ」
 念の為、シャルルはドア越しに声を投げた。帰ろうと踵を返すと、中からシンディが顔を出した。
「シャルル」
 顔が、少し浮腫んでいた。
「シンディ、居たんだ」
「ごめんなさい、酷い顔だけど。入って」

 

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