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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<13> 〜モモヨさんとシャープペン戦争〜

   2015年6月26日  

シャープペン戦争の勃発です。
ベスト文具大賞一位に選ばれたスラッシュと双璧をなすプラスを使う人たちが、とあることで揉めてるんです。
それでうちの店のスラッシュが売れないのね。商売あがったりだわ。
そんな戦争、早く終わってちょうだい!
『モモヨさんとシャープペン戦争』へどうぞいらっしゃい!

 

モモヨさんとシャープペン戦争

(あれ、おかしい)
 ある日曜日。期末テスト前、中高生で賑わう店内で百代さんは引き戸真正面に据えた特設展示スペースを凝視していた。
 オレンジとブルーのしましま模様の布がかかった台の上。
 先日発表されたベスト文具大賞でシャープペン部門一位を獲得した入手困難なスラッシュが十本、ガラスコップに入っている。百代さんが学生時代からあるシャープペンなのだが、ベスト文具大賞に選ばれて人気に火がついた。
(それを……!)
 一時的とはいえ入手困難になった物を十本も手に入れた。POPも気合い入れて描いて、試し書き用の白紙もちゃんと用意した。げんに今も、中学生が「スラッシュだってー」と特徴のある深緑を手に、お決まりのあいうえおを書いている。
「書きやすいよね」
「ねー。今流行りなんでしょ?」
(だったらなんで買わないの!?)
 百代さんの心の念がはじけ飛び、眉間に皺がぎゅうっと寄った。
 スラッシュは芯を削る機能や低重心、グリップとボディの一体化などなど高性能なわりに価格が五百円とお安い。この価格のおかげでスラッシュは一位に上り詰めたのだ。
 だが、一昨日金曜日入荷。のち、一本も売れない。
 みんなちらちらと見ていって試し書きをするのだが、どうしてか売れない。 内心首をかしげている百代さんは、消しゴムとルーズリーフを買いに来た馴染みの中学生・真琴がスラッシュで試し書きしているのを見つけると、そーっと近づいて、すーっと背後から這い寄った。
 ぽん、と手を置く。
 ぎゃっ! と飛び上がった真琴は、店主の顔を認めるとあからさまにほっとした。ずり落ちた商品を抱え直す。
「ビビったー」
「それさ、今、大人気。手に入れるのマジ大変」
 ご親切に指で示してやると、あははと笑いながら真琴はあっさり爆弾を放った。
「知ってる。つか、俺、プラス派。スラッシュ派じゃねーの」
 百代さんの顔が、無になった。
 眉も目も唇も真一文字の無。真琴がひらひらと顔の前で手を振ってみせる。
 永遠にわかり合うことのない文房具の派閥争いにまさか伏兵がいるとは思いもよらなかった。
(そうだ。スラッシュにはプラスという強敵がいた……)

 

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