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ハートフル

スキップ

   

雨の日は嫌い、特に梅雨の時期はじめじめして鬱陶しくて嫌
そんな私にもスキップをしたくなるくらいの気持ちになれる歳の頃があった

幼稚園の先生をしている主人公は、園児と共に雨の中を歩いて、昔の自分を思い出す、母子のほっこりとする超短編読み切り

 

 
 今年の梅雨入りは平年より遅いと言っていたのに、平年通りにやってきた梅雨入りに私はゲンナリとしてしまった。
 ただでさえ――というか、晴れの日でさえ注意力過剰が鉄則のような職業なのに、この時期はさらに追加、梅雨が終わればまたさらに追加となってしまう、その入り口の季節ともいえる梅雨は、私にとって好きとか嫌いとか以前に、もうどうにかして欲しいと願わずにはいられない。
 そもそも、私の名前にも問題があると思うのよね。
 別に好きで雨女になったわけじゃないわ……!
 あ、いや……うん、私自身、自覚しているわけじゃないんだけど、周りからよく言われるのよ、あなたが来ると殆ど雨よね――て。
 それが悪いってわけじゃないんだけど……
 ――と少し過去を振り返り、さした傘の隙間から雨空を仰いだその直後、悲劇が起きた。

◆◇◆◇◆

「いっやぁーーー!!」

 私は思わず叫び声をあげてしまった。

 パシャ!
 って物凄い水が跳ねる音。
 水の中に何かが落ちる音。
 その双方に思わず悲鳴をあげてしまっていた。

 ハッと我に返りおさげ髪を振り乱しながら辺りを見回す。
 辺りに人がいないことにホッと胸を撫で下ろした私は、この場にいるもうひとりの同性……と言っても私より年下の女の子に近づいた。

「美雨(みう)ちゃん、ダメじゃないの……ママに叱られるよ? その長靴、おニューなんでしょう?」

 しっかりと濡れてしまっている彼女の足元に目をやり、それから彼女の背中を見る。
 しかし当の本人はまったく気にしている様子がない。
 それどころか、何かを食い入るように見つめている。
 何を見ているのかと、私も彼女の視線の方を見た。
 今朝、新しい長靴なのと自慢気に話していたその長靴と同じピンク色の傘と、レインコートの隙間から覗き込んでみれば……

 

-ハートフル


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