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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイスⅡ 完結編10

   

洞窟を見付けたシャルルとシンディであったが、カサンドラにそっくりの管理人に見つかってしまう。
夜を待って再び乗り込むことにしたのだが。

オカルトファンタジー、第二弾!

 

「彼も、その一人?」
「そう、その一人だ」
 長く退屈な時間を経て、鉄道はイギリスへと到着する。そこから移動を繰り返し、なんとかその日のうちに予約したホテルへと到着した。
 明日、更に移動し、例の洞窟の場所へと向かうのだ。
 ホテルの近くのレストランで、三人は食事をする事にした。
 三人は、肉料理がメインの店に入った。
「まだ、カサンドラとエイハブを見ていない」
 シャルルが不安げに呟いた。
「二人が、悲劇の鍵であるのは確かよ」
「そろそろ、現れてもおかしくないと思うんだ」
 運ばれた鉄板ステーキを頬張りながら話すシャルルとロザリーナの会話を、シンディも食べながら聞いていた。
「私は、明日別行動をしようと思う。調べたいことがあるの」
 ロザリーナの発言に、シャルルは目を丸くした。
「僕も行くよ。一人でなんて、危険だ」
「大丈夫よ! 心配ないわ。シンディだって、シャルルとの方が安心でしょ。第一、シンディを一人には出来ないじゃない」
 シャルルは、頷いた。シンディは、ロザリーナの気遣いに少し胸が痛んだ。
「私、シャルルに変なことしたりしませんから」
 思わず声を上げていた。直後、シンディの顔が真っ赤になった。
「ありがとう」
 ロザリーナは、笑って見せた。
「調べたいって、何を?」
「勿論、カサンドラとエイハブの事よ。それに、二百年前の薔薇十字団の事も調べたいの」
「無茶はしないで」
「大丈夫よ」
「じゃあ、僕等は洞窟に行くよ」
「シャルルも、無茶は禁物よ」
「解ってる。何かあれば、すぐに報告するよ」
 シンディが、口を開いた。
「私は、どうすればいいの?」
 ロザリーナが説明した。
「私達の弱点は、聖なる水。天敵であるチャリスの泉に向かうわけよ。必ず、行く手を阻まれる時が来ると確信してる。そうなったとき、貴女の力が必要なのよ」
 シンディは、頷いた。
「ご武運を」
 ロザリーナの言葉が、シンディの胸に勇気を与えてくれたように感じた。
 翌早朝、シャルルとシンディは洞窟を求めてホテルを出発した。緑豊かな庭園のような場所の隅に小さな森のような木の覆い茂る場所があり、その中に足を進めてみると直ぐに辿り着いた。
 以前は立てられていたのであろう立ち入り禁止の看板は倒され、落書きされ、木材のために腐っていた。張り巡らされていたロープも弛んで、一部が地面に落ちていた。注意しなければ、ここが立ち入り禁止の場所だとは気付かないかもしれないとシャルルは思った。
 更に驚いたことに、洞窟の一部は崩れ、小さな土の山に等しい姿と化していた。勿論、入り口なんてモノも見当たらない。
「これが、本当に洞窟だったのかしら。私には、盛り上がった土にしか見えないわ」
 シンディが、顔をしかめた。
「本当に。予想以上に酷い有様だ」
 けれど、ここで諦める訳にはいかない。シャルルは両膝を地面に着くと、土の山に耳を近付けた。
「何か、聞こえる?」
 シンディの問いに、シャルルは首を左右に振った。
 そして、鞄の中から真空パックの赤い袋を取り出した。
「シャルル、何それ?」
「現代って、とても便利だね。病院から盗んで来た、血液のパックだよ」
「あ」
 と、シンディが声を上げた。フランスを発つ前、新聞で見た記事を思い出した。
「あの病院から血液が盗まれたって事件は」
「内緒」
 言いながら、シャルルは血液を飲んだ。彼の目が赤く光った。
「聞こえる、地面から水の音がする。それに、プネウマの気配もする。間違いない、確かにアーロンもクレメンティーナもこの下に居るはずだ」
「どうするの?」
 シャルルの歓喜に、シンディが同調して飛び跳ねた。
「この力で、土を割る」
「割るって?」
「モーゼのように地面を割るんだ。そのあと、扉を壊して中に入る。多分、直ぐ下は空洞になってるみたい。風の音がするんだ」
 シャルルが、振り向いた。
「ここで、何をしている? 立ち入り禁止だぞ」

 

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