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幻影草双紙81〜恋の丸の内(後編)〜

   

 時代資料につきましては、明治桜花大学の資料室に、お世話になりました。

 

** 補足説明 **

 最初に補足説明を入れておく。
 この小説の時代、海外旅行は、まだ自由化されていなかった。
 それだけ、海外観光地は夢の場所であったのだ。
 だが、海外の観光地として思いつくのは、せいぜい、ハワイやロンドン、パリくらいであった。
 トルコは、ほとんど知られていなかった。
 ちなみに、庄野真代の『飛んでイスタンブール』は1978年の作品である。
 『飛んでイスタンブール』の歌の時代でも、まだまだトルコは、遠い国であった。

** 補足説明おしまい **

 ラジオでは、間奏が入り、3番になった。

  ビルの二階の喫茶店
  待ち合わせて行くロードショー
  雪の舞ってる数寄屋橋
  銀座の灯りよ消えないで
  ああ、恋の、恋の、
  恋の丸の内

 桜井修造は、彼女との再会を、思い出していた。
 それは、思いもよらない時と場所であった。
 場所は日比谷公会堂。
 月下氷人は、メーメットという名前のトルコ人。
 彼はウード奏者であった。

 その年の年末のことである。
 日比谷公会堂でトルコ音楽の演奏会があったのだ。
 実際に、トルコから奏者を招いての演奏会である。

 桜井修造は、複雑な気持ちで聞きに行った。
 彼は、子供のころから、シルクロードとかアラビアンナイトなどが好きだったのだ。
 この演奏会は、見逃せないものであった。
 だが、最近、心は、鬱々としている。
 いくら探しても、あの女性は見つからない……。
 もう駄目だ……。
 年が明け、仕事に区切りがついたら故郷へ帰ろう……。
 もう、国際ビジネスマンになる夢は捨てた……。
 そんな気持ちのときに、演奏会が楽しめるであろうか。
 さまざまに乱れる心で、それでも、演奏会へ行ったのであった。

 トルコや中近東がブームになる前のことである。
 聞きに来た聴衆もそんなに多くなく、演奏会は家族的な雰囲気の中で終わった。

 桜井修造は、この演奏会で、ひさしぶりに憂さを晴らすことができた。
 一時的に、ではあるのだが。
 演奏会の終了後、桜井修造は、楽屋にメーメットを訪ねた。

 

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