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SF・ファンタジー・ホラー

cat 〜その想い〜 19

   

 岱馳は杏那の夢でもあったイラストレーターを引き継ぐ決意を固めた。
 どんな職業なのかわからないが絵を描き、岱馳の唯一の特技ともいえる詩を書き添え、ひとつの作品に仕上げる。
 それが岱馳ならではの夢へと変化させた。

 趣味程度に思いついて手掛けていくも、これがいったいどんな形になるのか、どのように世間に評価されるようになるか、そこまで考えていても、いまの会社勤めを辞めて、独自のイラストレーターという職業に就くことになるか、先は闇のように暗い。

 同僚たちにその仕上がった作品を、葉書きに描き送った。賛否両論の意見があった。
 とりわけ坂下は否定的だった。

 しかし、岱馳の覚悟と杏那の隠していた夢、その意思を自分なりに形にしたい想いをどうしても拭えなかった。
 あたたかい目で、みてもらえるよう同調してもらった。

 カメラで風景を撮影するために、レンタカーを借りて旅にでることをしていた。
 とある休日のその日も猫を連れてでかけようとした。そのとき、不可解な人物と遭遇した。

 南藍子がいっていた”占い師の老婆”と出会った。

 かつてないほど猫は脅えて身を隠そうとしていた。岱馳もその異様な雰囲気の前で尻込みしていた。

 この老婆の存在に、岱馳はこれから不快な思いをさせられるのだ。

 旅先の偶然の出会いというのは、その後の人生に影響を与える。
 岱馳は夢の断片をたしかなものにしようとしていた。

“村鮫児童教院”。
 岱馳にとっても人生の枝分かれになる地点となる。

 

 猫の変化は、岱馳はいまだなにもしらない。もし、しってしまったら、完全に化け猫が傍らにいることへの恐怖から逃れることに必死になるだろう。
 まぬけな小さい毛だるまがベランダで安住している。その姿をみて癒されているキャラクターであると、岱馳は心から信じている。

 南の元上司だった神田のことは岱馳も知った。テレビのニュースで報じられていた。
 神田のことはどうでもいい。加害者でありながら最悪な人間として叩かれるはずだった。なぜなら、女子高生をどうにかしてしまおうとしていたのだからだ。余罪がないか、警察も本腰入れて捜査をしている。
 ざまあない。そしていまもなお、その報いをうけている最中である。
 神田は精神病棟でおかしくなった頭を治療するために、おそらくこの先の人生を鳥かごのなかで過すことになるだろう。と、専門家が話していた。
「この男のせいで、南さんは道をはずした。恨むぜ」岱馳もまた被害者であったのだから。元凶がみじめに介護されていろ。

 南 藍子からの想いを逃れることができたのは、ほんとうに肩の荷が降りて、危機管理のリストからひとつ名目を削除できた。
「これでいい」岱馳は幸福に満ちたような笑みを浮かべていた。
「これでやっと杏那との過去の日々に浸れるというものだ」
 岱馳はいまだに過去の時間のなかで生きていた。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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