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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<14> 〜モモヨさんとタイムリミット〜

   2015年7月10日  

乗り越えられない、変えられない現実をどうすればいいと思う?
週末にモモの家にデートに向かうと、モモは変だった。
福永文具店におそいかかる重厚な現実の前にもう為す術はないのか?
『モモヨさんとタイムリミット』――終わりが始まった。

 

モモヨさんとタイムリミット

 週末。取り付けた――というか、むりやり取り決めたデートの約束を果たすため松野沢からどんどこ下って月世野へ。
 子どもが作ったブロックおもちゃのように県道十二号に出っ張っている福永文具店に到着すると、モモは始終へらへらとして変だった。
 浮ついているというか、地に足が付いていないというか。
 その理由は分かっていて、切り出すときは今じゃない。 
 俺もモモも黙って家飲みデートと相成った。
 デートと言ってもたいしたことじゃなく、俺が松野沢で作っている料理を出し、それをモモがビール片手に食べるという具合だった。
 まったくガキのデートじゃあるまいし。
 ほかにもいろいろあるだろう。
 そう思うのだが、これ以上踏み込まれたくないモモは嬉しそうだった。
 厄介な女を好きになったもんだなと自分でも思う。
 お互いが正反対を向いているものだから背中はくっついていても決して道は交わらない。モモはじいさんばあさんになったら道が交わるかもねと言っていたが、無理だ。たとえじいさんばあさんになっても背中合わせは変わらないだろう。
「モモ美味いか?」
「おいひい」
 台所から居間を振り返ると、ビールで頬を赤く染めたモモがのそりと手を上げた。ちゃぶ台には目を覆いたくなるほどの空き缶が載っている。まるでやけ酒のようだった。モモが直面してる現実の前には無理もないが。
「飲み過ぎだ」
「大丈夫。これでも強いんだって。知ってるでしょ?」
 モモは相変わらずへらへらとしたまま応じ、ソラマメのかき揚げを飢えたハムスターのようにぼりぼり食べた。
「味わって食えよ」
「食ってるって。タカもこっち来て食べようよ」
「もうちょっとで終わるから待ってろ」
 ブーイングが背後であがる。ひどい甘ったれだ。やっぱり今日のモモはおかしかった。

 

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