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SF・ファンタジー・ホラー

cat 〜その想い〜 23

   

 事態は急変した。
 岱馳とその子と猫は街中でデートをしていた。唐突にも猫は人々の群れのなかを疾走した。
 呆然となる岱馳。これまで離れるようなことは一度だけしかなかった。
 占い師のちいさきおばあさんと遭遇したとき。初めてだろう、自らの意思で主から遠ざかったのは。

 岱馳はその子を置いて猫を追尾する。そのとき占い師が視界に入った。
 意味深なことをいうが、それどころではない。猫の行方が気がかりで人ごみを掻き分けて追いかける。
 しかし、健闘むなしく見失った。

 すると、都会の騒音のなかで、岱馳の聴覚に囁きかける声がきこえた。無意識にその声に反応して、誘われるまま追いかけはじめた。

 猫の目的がなにか、わからないまま岱馳は誘われる声に、ある廃墟ビルの前までたどり着いた。

 そこでなにか異様な気配を感じ取った岱馳は臆している。

 ついに最終章へ突入。

 そして、杏那を轢き殺した犯人も登場。

 

 最近噂が飛び回っていることを、岱馳も耳にした。以前ニュースでも報道されていた事件のことだ。

 池袋、サンシャイン近くにある公園で、外傷による出血死。刃物で切りつけられたような外傷が数十箇所もあり、それは、生き物の爪や牙であると。
 凶暴な動物が生息している恐れがある。その正体が解明されたという報道がなされた。
「あれは、虎や豹、山猫のような動物だという見解です」ひとりの専門家がアナウンサーの質問に答えていた。
「だとすると、その動物はいまはどこに?」アナウンサーがたずねる。
「わかりません。野生の動物が都会のような場所に生息しているのであれば、それはだれかしろ気づくはずです。どうあっても隠れとおせるはずはない。犯罪者ではないのだから」
「そうですね。もっともです」
 アナウンサーがそういうと、別のキャスターがボードで説明をする。
「つきましては、この事件は、一例だけではないのです。ほかにも、おなじような死傷者がいるという報告があり、どうもおなじ動物の犯行ではないかと囁かれています」
「それはどういうことでそうみているのでしょうか?」アナウンサーがいった。
「どうやら」キャスターがつづける。「共通する面があるのです。ひとりめ、ピアニストの藤村 葵さんも惨殺されてます。彼女は天才ヴァイオリニストの霞 遼さんと交際をされていたとのこと。そして、その霞さんもまた精神面に支障をきたして入院されています」
 専門家もアナウンサーも黙ってきいている。
「そして、高校の美術顧問である平門 将之さんも、また惨殺されていたようです。そして、都内に住む神田 輝樹さんは精神面をきたして精神病棟にはいっているとのことです。いずれもなにか、この動物だとしたら、その生き物にやられてしまったということです」キャスターはそこで話を終えた。
「でも、ピアニストの藤村さんとヴァイオリニストの霞さんは共通点があるにせよ、ほかの被害者や被害者同士の接点はまるでないのですね」アナウンサーがいった。
「はい。そのとおりです」
「これはどうみますか?」アナウンサーが専門家にたずねている。
「野生の動物であれば、無差別に襲ったのはうなずけます。この犠牲者の方たちは不幸にみまわれた。ただそれだけなのではないでしょうか」専門家の見解は、ただの運がわるかったということだ。

 岱馳はそのニュースをみていた。腑に落ちないようなことだが、憤慨しながら「ふーん」と納得させていた。
 猫は岱馳のそばでそっぽをむいていた。なぜか、この手のニュースになると興味なさそうにまぶたを閉じて丸くなっているのだ。
「最後に」キャスターがいった。「この事件には多少なりとも目撃者がいました。しかしそれは、奇怪な証言であまりにも突拍子もないこと―」
 それはなに? とアナウンサーがきくと、キャスターはいかにももったいつけた様子で話すのだ。
「被害者が倒れていたところは白い靄のような煙がこもっており、周辺のひとの目を避けるようにそれはあたりを包んでいた。その霧が晴れるとひとが倒れていた。というのです。まるで霊的な現象だとは思いませんか?」
 キャスターは、以外にもオカルトが好きなひとだった。アナウンサーや専門家は、キャスターの意見を無視している。正確な事実を伝えるアナウンサーと、霊的という不可解な立証しえない現象には答えなどない、といわんばかりに唸り頭を傾げていた。
「この世に未練のある死者の魂が、思わず目についたひとを闇の世界に引きずりこもうとしたためにおきた現象ではないか。巻き添えを喰った被害者だったかもしれない」キャスターがここまで干渉的に発言してはならないものだが、これはもう言ってしまったから、仕方がない。
 キャスターはお説教を喰らうだろう。と岱馳は同情していた。
「そんな話あるわけないだろ」揶揄する岱馳だった。

 

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