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死神の鏡身 六話

   

死神も夢を見るのだろうか、死神もものを考えるのだろうか。死神はその存在意義に疑問を持つことがあるのだろうか

 

  死神の鏡身 六話

「それで、これはなんなの? お兄ぃ」
 シャオは砂浜に正座させられていた。正座するほどの元気があるのはカイリュウが謎の治療術で怪我をすっかり直してくれたからだが、こんな仕打ちを受けるなら貧血に悩まされていたほうが楽だったのにとシャオは思った。
「これって……。どれ」
 無駄だと思っていてもしらばっくれずにはいられない。
 それはクジュがおこっている理由がいまいちわからないのが原因だった。
 危ないことをしたからだとはシャオも検討をつけているが、だったら最初にきくべきはなぜ戦闘をしていたかで、カイリュウのことではないはずだからだ。
「これって、この……」
 クジュはこの生物を形容する言葉を思いつかないようだ。青い巨大なトカゲが一番近いだろうが。顔になんとなく愛嬌があるしそう評価したくないのかも知れなかった。
 そしてカイリュウはその視線に気づいているのかいないのか。泉のほとりで口論を繰り広げる二人は見ないふりして寝ている。
「もう……、じゃあ、話しやすい順番で話す権利をあげる」
 その時カイリュウがくるぉと鳴いた。
 そして当のシャオは額に脂汗を浮かべている。
(どう説明すればいい?)
 何とかしてごまかさなければいけなかった、隣でのんきにあくびをする龍のことや、死神のこと、全てをクジュに話すのは気が引けたのだ。
 正直に話せばクジュは心配するだろうし、つらく思うだろうからだ。
 シャオの脳裏に毎晩泣きじゃくって姉を探すクジュの姿がよみがえった。
「えっと……」
「えっとは、なしよ。次に口を開いたときにきちんと説明してくれなかったら、晩御飯が毎日焦げた魚に替わるからね」
 消し炭になった魚をシャオは思い浮かべる。
 それはだめだと反射的にシャオは思った。魚が可哀そ過ぎる。
「…………」
 くるぉおおおおお。
 その時、そうカイリュウが鳴いた。しかもシャオが今まで聞いたことがないくらいかわいい声だった。
「いまさらだけど、この子かわいいね、どうしたの?」
 くるるるるるる、そうカイリュウは鳴き声を続ける。ねぼけているのかも知れない。
 そしてその時シャオの脳裏に電撃が走った。
「それはペットです」
「ペット?」
 ぽつりとつぶやいたシャオの言葉に、カイリュウは真っ先に反応した。長い首を持ち上げてシャオをにらむ。
(なんだ、寝てるわけじゃないのか)
「いや、探索中に拾ったんだ、育ててるんだよ。見たことないだろ? まだこれで子供なんだ。きちんと育ちきってから海に帰そうと思っていたんだよ」
 さぁ。これでクジュは納得するだろうか。
 シャオは身を固くして、クジュの言葉を待つ。
 何せこれで納得しなければ後がない。
「なら、あの子はもういいよ、次にその傷は何? すごい沢山血を流していたみたいだけど?」
 さすがにクジュはあの泉を通ってここまでやってきたわけだから、水が尋常ではありえないぐらい血なまぐさかったことに気が付いたようだ。
「ああ、それも実験みたいなもんで、あの生物は人間の傷をふさぐのが得意なんだ、だから……」
 クジュがあからさまに怪しげな視線を向ける。
「ねぇ。嘘はやめてよ、ククイのことと関係があるんでしょ?」
「そうだ! ククイはどこに行った、あの騒ぎはどうなったんだ?」
「話を逸らさないで! というかお兄ぃが真っ先に捜索に言ったんじゃない、何かわかってないの?」
「なにも手掛かりはなかった。だからどうなったか知りたかったんだ」
 嘘だ、そんなわけはなかった、知っている。その事件がどういう経緯でそうなり、どんな結末に至ったか、シャオは知っていた。
「先生方は何もわかっていないみたいだった。ねぇお兄ぃ。都にいったい何が起こってるの? 最近変だよ」
 シャオは引きつった笑みを浮かべた。クジュは何かに気が付いている。
 しかし、だとしても、シャオはクジュにすべてを語ることはできなかった。
 なぜなら。先刻戦った死神。
 もし彼女がシャオの死神だとすれば、近いうちにシャオは……
(ダメだ、頭が痛い、何も考えられない)
 カイリュウが傷をふさいでくれたとはいえ、シャオは血を失ったままだ。先ほどから頭痛がやまない、そんな状態でククイのこと、死神のこと、そして自分がこれからどうなるのか、考えるだけで吐き気がした。
 そんな様子を察したのかクジュは急にお怒りモードを解いて。
「もういいよ」
 そう言った。
 今日のクジュは夜更かしをしている。夜も更け月が沈むころ、夜の寒さが徐々に朝の温かさに替わりつつあり、クジュは眠そうにあくびを一つした。
「いいのか?」
「病人をいじめたくないもん」
「そうか、ありがたい」
 シャオは浜辺に大の字で横になる、そこにクジュがやってきて腕を枕にして寝そべった。
「それにしても、綺麗なところだね」
 クジュはあたりを見渡す。

 

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