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ラブストーリー

星座を見上げて 前半

   

 桐谷響子は広告代理店宣伝部で、仕事とは関係のないところで本来の持つ能力のすべてを発揮していた。

 大学時代の先輩である、透と深紅は幼馴染で、いつの間にか恋人へ進展していた。
 そこで透はプロポーズを躊躇っていた。
 見兼ねた響子は、行動派であり勝手に透へ提案する。さすが宣伝部での手腕があるな、と透は関心する。
 しかし、透も思案主義で、自分のイメージどおりのシチュエーションにこだわっていた。一世一代のプロポーズのシーンを、深紅にサプライズ的にプレゼントしたい。と考えている。

 響子は、あるシチュエーションのために、とあるセキュリティ会社に単身おもむく。そこで二人の関係者にプレゼンを話し聞かせた。響子の熱意に呆気にとられているふたりだが、協力を惜しまなかった。

 さらに、究極のお助け人がまさかの人物で、透と深紅に、最大なプレゼントを、響子は贈りたい思いがあったため、この人物の協力が不可欠となる。

 その話をきいた透は、響子に絶大なる信頼を寄せた。

 

 ひとを驚かすことに喜びを感じるのは、それは文字どおり喜ぶからだ。サプライズといえば受け入れやすく思うだろう。それも幸福になれるサプライズなら、一生忘れることがない。
 人生それほどサプライズとして主人公になれる瞬間はない。

 世間の、ひとの目で目撃してもらえるのなら、どれだけ祝福されるか、世界じゅうがハッピーになれる瞬間なんて、そうお目にかかることはない。感情を持つひとすべてが歓喜し、沸いて気持ちが同調する。
 幸福のおすそわけ、だれもが微笑みになる瞬間だろう。

 それを企画している若き女性がひとりいる。

 桐谷 響子(きりや きょうこ)23歳、仕事は広告代理店の宣伝部にいる。
 仕事もそうだが、いまいちばん躍起になっている事案が彼女の心を支配していた。

 知り合いの先輩が、結婚に踏み込めないのを響子はやきもきしていた。
 そのふたりが。
 柏葉 透(かしわば とおる)25歳。
 早坂 深紅(はやさか みく)24歳。

 大学のときのサークルの先輩。ふたりは幼馴染らしく、響子が「いつから付き合ってるの?」と、学生のころ尋ねたが、いつのまにか交際をしていたらしい。はっきりと恋人としてはじめた日を改めてカレンダーに記すことを決めた。
 そこからなにかと、深紅は記念日と称してカレンダーに花まるのしるしを増やしていった。それがたのしみになっていた。
 それからというもの、透と深紅は本気で真剣に向き合い、たがいに信頼し合い共に時間を過ごしていた。

 透は、結婚の言葉をくちに出せないでいた。どういえばいいかわからない。自然に言葉を切り出したいという、妙にかっこをつけていた。
 響子はズバッといえばいいの、と堰きたてるが、「そうじゃないんだよな」とはぐらかす。
 好きなはずなのに、どういうわけか肝心なことに踏み出せないのが男というものだと、響子は憤慨していた。

「男ってほんと軟弱なんだから」
 深紅は響子の鋭い言葉を受け流していた。自分の彼氏をわるくいわれるのは我慢ならないからだ。だが、その反面な気持ちが宿ってはいる。そんな後輩の気遣いが、うれしくもあった。だからこの場合は受け流すしか方法がなかった。
「でもね、こんどデートするんだ」深紅は頬を紅潮させながらいった。
「ミク先輩、顔赤くなってかわいい! どんなデート?」響子は先輩の深紅にリスペクトという好意を持っていた。
 だからほかのひとより数倍しあわせになってもらいたかったのだ。
「う~ん、どんなデートかはわからない。でもいろいろ考えてくれているとおもってるよ」
 のんびりな性格が深紅の欠点でもある。自分の彼氏を急かすことくらいしたほうがいい。積極性がある響子は、いつも煽るのだ。むりやり背中を押すことも多い。
「そう…」響子は、自分がこれからとる行動が決まった。

 透の携帯電話が光る。いつもの曲が鳴る。着信音はエグザイルのシューティングスターだ。サビの四小節分を聞いて、出ることにしている。
「はい?」
 着信相手はディスプレイに表示されているからかしこまって出る必要はないのだが、話の内容がみえているだけに、かしこまらざるしかなかった。
「はやくでなさいよ」
 透は、やっぱりかこの物言い、と思った。
「響子ちゃん、なに?」深紅とのデートのことだ。
 だいたいが深紅との交際についての苦言や非難のことで透は響子に通話代を消費されることになる。でもこんかいはちがったようだ。苦言や非難ではない。
「でも、どうしたわけ? えっ?」透は思いがけないことを響子からの提案を聞いた。
 もちろん透も黙ってはいられない。それは、自分で描いたシナリオを思案していたからだ。
「わかった。いちど、響子ちゃんと話すことにしよう。いつ時間ある?」
 透と響子は日時と場所を決めて電話を切った。
「世話焼きのじゃじゃ馬後輩娘だな」透は、影が差す笑みを浮かべた。

 

-ラブストーリー

星座を見上げて<全2話> 第1話第2話

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