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ラブストーリー

星座を見上げて 後半

   

 すべてのシーンを、透の理想どおりに描くことが可能となった。
 響子のおかげだった。

 あとは透がエスコートするのみだ。深紅もおそらく期待している。
 いまいちばんふさわしい言葉のひとつを待っている。

 これまでのデートとはちがうプランであることはすでに承知の事実だった。

 話の流れで、ロマンティックな場面での時間の過ごし方だと、深紅は感じはじめていた。
 それはじょじょに届いていく。

 そして、まさかの透も知らなかった響子からのサプライズ。
 それは世界の人々にも届けるような幸福のプレゼントだった。

 ドキュメンタリータッチの映画を観ている気分になる、ラブストーリーを12月中旬の夜、垣間見るのだ。
 世界じゅうの人々が、拍手喝采、そして賞賛の声を上げるのだ。
 ほっとさせられるような男女の恋。だれもが願いたくなるふたりの幸福。

 響子自身がいちばん幸福を胸にしまいこんでいた。

 そして、ふたりはその名が星になり、永遠語り継がれる存在になるのだ。

 

 ステージ開幕のその日がきた。

 残暑からはじまった企画も、ついに冬の寒さが訪れた。アイスコーヒーからホットコーヒーがエネルギーとなっていた。
 アスファルトを照らす自動車のライト。闇を切り裂くように男女は幸福な運命を迎える瞬間を、その身に感じるためにその場所へと向かう。

 深紅がいった。とても声が明るく弾んでいた。「ねぇ、夜にドライブなんてめずらしくない?」
 運転席で運転する透。「きょうはここでキミと一緒に星をみようと思って」
 たわいもない話を車内で続けた。木々に囲まれた公園の一角に、二人を乗せた自動車が停止する。透はトランクに積んでいたテーブルと椅子を取り出す。夜空が一望できる場所から彼女と並んで見上げる。
「少し冷えない?」
「寒いか?」透は彼女に気遣う。「でも水筒もある、中身はホットコーヒーだ。それにサブウェイのサンドイッチを用意してある」
 きょうのためにレンタカーを借りて、透は自宅で用意したホットコーヒーと、サブウェイでサンドイッチを購入後、深紅の自宅へと向かった。
「え、ほんとうに? なに、なにがあるの?」
「ニュースでやってたよ。なんか、双子座流星群が今宵は見れるらしく…」
「あ、そう…」深紅は、うかない顔をしている。
「願い事、祈り放題だぜ!」
「あれもこれも祈って、願い事って叶うものなの?」
「さぁ、やってみたら? ちなみになんかある?」
「それはあるけど」じっーと透の顔を上目づかいで見ている。
 透はその視線に気づかないわけがない。だが、じゃっかん視線をそらしていた。「まぁ、もっとも流星に願い事しても意味ないけどな」
「なんで?」彼女はいう。
「流星群とは…まず、”流星”というのが宇宙の小さな塵が地球の大気に飛び込んだ時に発光する現象のこと。この流星が一群になって現れるものを”流星群”と言う。その中心近くにある星座の名前を用いて”○○座流星群”と呼称されているんだよ…」
 深紅は関心する。「へぇ、よく覚えました。えらいです」
「だからそんなものに祈っても願いは叶わない」
「なによ、それ…夢がないの」
 きらめきは億単位で夜空に散らばっている。その星が、冬至の枯れた枝が多少視界にはいって、背景の黒いキャンバスに点滅する星たちが、星座の形を描いているのをじゃまをしている。
「星座にくわしかった?」
「少しはな。セイントセイヤすきだし」男なら誰でも好きな漫画だ。
「あぁ、あの星座の漫画ね…わたしは見たことないけど」
「自分の星座くらいしってるだろ」透は深紅につっこむ。
「水瓶座だけど、どこにあるの?」
 透の自信が満ち溢れた。「ふふふふ、水瓶座か…、しらん」
「えぇぇぇぇぇぇぇ! ちょっとなによそれ!」
「みりゃわかるじゃん、星多すぎなんだよ…てか、わかりずれーもんだよ、星座を見つけるなんて」
「じゃぁ、なにしにきたのよ」深紅はどこか憤慨していた。
「なにいってんだよ、星の鑑賞だよ」
「主旨はそうかもしれないけど…」
「ちょっと待って」透はポケットをさぐる。「スマホのアプリでそんなのあるだろ…」
 便利な世の中だ。こんな暗がりのなかで、公園のような場所にもかかわらず、手形サイズの通信機器で情報収集にこと欠かない。
”話が止まらずにすむのはイイ”。
「skyマップ、おっこれだ…みて、方角もわかるし、星座の形がひとつずつ紹介されている。このとおりに空をなぞってみるか?」
「えっ、指でなぞるの? できるかしら」
 ふたりで星座を、瞬く星と星をなぞるようにして紡ぐ。そんな些細なことをたのしむ。
「ねぇ」深紅はみつけたようだ。「ほんとうにこれ、水瓶座かな?」
「う~ん、どうだろ…でもなんかそれっぽいような…むりやり輝いてる星つないでみたら…」
「それじゃぁほんとうの星座じゃないよ」
「ハッハハハ、そうだな」
「やっぱりわかんないね」
「だいじょうぶ、かならず探す…探そうぜ」

 

-ラブストーリー

星座を見上げて<全2話> 第1話第2話

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