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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

天使のように、泣け [第3話]

   

いくら待ってもミズハは来なかった。
そして笹倉から珠里に伝えられる赤竜会がタカハを捕らえたという情報。
珠里はミズハを助けに行くが……
悲劇は防げるのか?
『天使のように、泣け』完結

 

第3話

 珠里と笹倉がホテルで〝仲睦まじく〟過ごしていた時刻。
 オトナシ タカハは血に染まった手と工具を洗い流していた。
 脂と血がにかわのように粘りつき、何度もクレンジングチューブを絞り出す。洗い終えると水の滴る手を鼻に近づけ、スンスンと臭いを嗅いで眉をしかめた。 先ほどまで悪態をつき、呻きと怨嗟を叫んでいた赤竜会の中層の頭は分断され、胴体から離れて転がっていた。頭の下に体から流れ出した血が固まりだしている。タカハはボールのような頭を小脇に抱えると、水道に繋いだホースで床に飛び散った血を洗い流した。
 証拠隠滅するにはずさんすぎる。
 だがタカハにはたんに臭くなるからという考えしかなかった。
「じゃ、お別れだ」
 刃物で切り込みを入れられて〝一応、念のため〟顔を潰した頭と細かくバラバラにした(これだってビニール袋に入れるからという理由だけだった)身体をゴミ袋に詰めると、袋を二重にして口を固くしばった。
(これで赤竜会はどこまで出てくるかな……)
 人ひとりが入ったビニール袋を担ぐと、ねぐらから出てゴミ集積所に向かった。細い体からは考えられないほど、膂力(りょりょく)がある。出された家庭ゴミと一緒に放り投げると、ねぐらに戻らずそのまま去った。
 あそこはもう二度と使えない。
 もっとももう使う気はなかったが。
(ミズハとお腹の子を守れれば僕はなにもいらない)
 オトナシ タカハはその美貌に似つかわしくない、歪んだ微笑を浮かべると夜の街に消えていく。
(僕はお腹の子の父親なんだから)

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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