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ラブストーリー

love puzzle

   

 透と深紅の恋の行方の続編。愛の告白と世界に幸福を届けたあの日の夜から、数ヵ月後の話を、書き記す。

 多くのひとたちによって協力してもらった。夜空を見上げれば、二人の名を中心にした星座が輝いている。

 だが、地上のふたりの関係はパズルのようになっていた。
 少しの感情のズレから、心のすれちがいが生じていく。それはまるでパズルのようだった。形が合わずに変えては、埋まるまではめていく。やっとの思いではめこんだピースは、無感情に次へと心は移行する。

 深紅の心が掴めなくなっていた。
 ちょっとした感情の噛み合わない部分が見えはじめて、言葉のひとつひとつに棘混じりにつぶやく透。

 だが、このままではただ終わるだけ。そこで透は、深紅の誕生日のためにサプライズ企画をする。
 以前は協力してもらったが、今回はひとりですべてやってみせると決意していた。

 場所はお台場。渡せなかったもうひとつのプレゼントとともに、幾重にも仕掛けた透のサプライズ。
 深紅に思いは届くのか。それがどういう意味かを、きっと深紅はわかってくれるはず。

 透はそう信じて、リスクをチャンスに変える決意を固めるのだ。

 

 俺は、柏葉 透(かしわば とおる)25歳。いま人生で最大のピンチに陥っていた。

 交際している、早坂 深紅(はやさか みく)24歳。もうすぐ誕生日を迎えようとしていた。
 そのバースデーをどういうふうに過ごすか、その対話のさなか、ひと悶着おきてしまった。

 彼女の深紅はパズルをするのが趣味だ。出来上がっていく経緯を見るのが好きらしい。それを完成させたとき、彼女はいつも「ふふふん、できた」ひと微笑みして満足するのだ。

 俺はそんな細々したものをやる気にはならない。

 だが、深紅はいつもいう。
「ほんとうにこの絵のとおりになるか、イメージをわかすのにいいの、ひとつひとつ形がはまるのを見ていく経緯になにか”ひらめき”のようなものを感じるときがあるの。透くんもやってみたら」

「そんな時間あったら勉強でもやるさ」

「そうやっていつもシリアスぶるんだから」

 いつもたがいに微笑む。そんなふたりがちょっとした言い合いでケンカになってしまった。

 深紅の部屋で、いつものようにパズルをしている。
 透はパズルを挟んで向かいに座っていた。睨みつけている深紅。透は顔をそむけていた。

 沈黙。空気がじょじょに重みを増していく。蜘蛛の糸が幾重にもふりかかって動作を鈍くさせていく。

 無言のまま、深紅がやりかけのパズルのピースを握り、透めがけて投げつけてきた。

 その侮辱的な行為に、透はイラついた。その場を逃げ出すきっかけにもなった。
「もういい」捨て台詞としてだれもが使う言葉だ。

 外にでて街灯の下、あごが下がり、呆然とたたずむ。そして、つぶやく。
「うわ、めんどくせぇー」

 深紅は静まり返った部屋のなかで、クッションに顔をうずめていた。

 一週間、連絡をしなかった。仕事場がちがったのが幸い。そして、住まいも最寄り駅がちがう。日程を決めなければ会えない状況に、透はどうするか悩んでいた。

”彼女の誕生日”、透とおなじ25歳になる。
 その日の予定をどうしようかという話が、どういういきさつで喧騒になってしまい重苦しい空気にさせてしまったのか、すでに忘れてしまった。

 おそらく、透はこうしたいといったが、それに深紅は反発して私はこうしたいと、些細な意見の食い違いが、エスカレートしてしまったのだろう。

 もしかしたら、対話のなかで、彼女を中傷、罵ってしまったかもしれない。
 くだらない、おもしろくない、そんなの意味がない、無駄だ…のような発言を繰り返していたかもしれない。これはすべて彼女の意見と提案を、すべて透は否定したことになる。怒るに決まっているのに気遣えなかった。
 口をついて出た言葉、それは引っ込められない。しかも意識なしで出た言葉は無責任なのだ。

 大人気ない。

 透はつぶやく。
「ぐだぐだとやってられん」

 

-ラブストーリー


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