幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

幻影草双紙88〜どこかで聞いた話8〜

   

 蒲松齢は、話が好きなようです。どんどん話してくれました。

 

*** 《推敲の話》

 昔々、中国大陸でのお話です。
 ある大金持ちの家に、玉輪という名前の娘がいました。
 小さい頃から美人として評判でした。
 両親は、金に糸目を付けずに、娘を教育しました。
 女性として身につけるべきことを、すべて教え込んだのです。
 当時の中国では、女性として身につけるべきこと、とは歌舞音曲でした。
 つまり、歌や踊りが上手で、楽器も巧みに演奏する、というのが女性の教養だったのです。
 玉輪は、これらをすぐに習得しました。
 生まれながらに芸術関係の才能に恵まれていたのです。

 玉輪は、歌いながら、歌詞が拙いと思うことが、度々ありました。
(私なら、もっと上手く作る)
 こう考えたのです。
 玉輪は、密かに作詩を始めました。
 あくまでも密かにです。
 当時の風潮では、作詩は男性がやることだ、と考えられていたのです。

 年頃になった玉輪は、同じような大金持ちの家に嫁ぎました。
 結婚したからといって、家事をやるようになったわけではありません。
 なにしろ大金持ちの家ですから、用事は全部、使用人がやってくれます。
 遊び暮らす玉輪の生活に、ほとんど変化はなかったのです。
 結婚して性愛の楽しさを知ったのが、ただ1つの変化でした。

 ところが、結婚して1年も経たないうちに、夫が死んでしまいました。
 玉輪は、莫大な遺産を受け継ぐ未亡人になったのです。
 これでもう、誰はばかることのない生活をすることが出来るようになりました。
 毎日毎晩、歌や踊りの宴会に明け暮れました。
 次々と、若い男を寝室へ引き入れました。
 そのうち、玉輪は、ふと思いつきました。
(作詩をやってみようか)
 今の玉輪の境遇では、何をやろうが、誰も文句をいいません。
 男がやる作詩をやっても、咎める者はいないのです。
 玉輪は、独学で詩を作り、夢中になってしまいました。
 やはり毎日、宴会は続けました。
 若い男との性愛にも、耽りました。
 でも、いちばん長く夢中になれるのは、作詩でした。
 天が与えた芸術的才能の頂点は、実は、作詩だったのです。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16