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SF・ファンタジー・ホラー

死神の鏡身 七話

   

 見れば見るほどそっくりだ、パッチリ開いた目も、いつも湛えた微笑もそっくり、シャオと違って黒い髪の色をしていても、それでも髪を短くしたら同一人物と間違われてしまうだろう。
 そう思うとシャオは恐ろしくなった、こいつが自分と入れ替わって生活を送るのを想像して。
 そして、死神はそんなそっくりな顔で苦虫を噛み潰したように笑った。
「君はおかしい、だって。そっくりな見た目で殺しにくるのは死神伝説そのもののはずだ、それでなくとも君は私を君の死神だと直感的に理解している。なのに私が何故いるかを問うなんて」
 そういって死神は笑った。
「おかしい? 違う、お前がおかしいんだ。死神の伝説どおりといっておきながら、全然どおりじゃない。まるで死神伝説の皮をかぶった詐欺じゃないか」
 そもそもこうやって自分の死神と話せている自体が異常だとシャオは思った、本来死神とは殺すか殺されるかのはず。そこに思考や私情が挟まる余地などない。なのにこの死神は自分でものを考えるし、自分の意思で話す。
「詐欺じゃない、たとえ私がどんな存在であっても、何が起こっても、私はあなたを殺す。それなら死神と同じじゃないか」
 戦慄した、意思を持って圧倒的な力を振りかざし、シャオを襲うその現象に。そしてなぜ命を狙われるのかわからない今の状況に。
 思わずシャオは一歩あとずさる。
 自分の全身が緊張している、それがわかる。
「そんな必用は無いはずだ……。だって、俺は死ぬべき理由なんて無い」
「自然死に理由なんて求めること自体が間違ってる、理由なんてなくても人は死んでしまう……、事故、病、飢え、人間は脆い、少し食い違っただけで死んでしまう。そのことを君は知っているはずだ」
「自分は自然災害と同じって言いたいのか? 俺の死に何の理由もないと」
「間違ってない、その通り」
 死神の目がぎらつく。
「一ヶ月。次の祭りの夜までに、君を殺す」
 翻る黒衣、死神はシャオに背を向けそういった。
「いつでも死ねるように、準備しておけ」

*  *

 ガラガラガラと、つんだ木材が崩れた。
 それをクジュは茫然自失と言った調子で黙って見ている。あたりの喧騒が一瞬遠のいた気がした。
 ここは祭り会場の一角、あたりを見渡せば筋骨隆々の男たちや、笑顔を振りまき心底楽しそうに作業を行う学生の群れ、そして指示を出す機関の人間たちなどたくさんの人がいた。
 その中でなぜか一人だけ、孤独感を感じているクジュだった。
「あ~あ、もう、はぁ」
 そうため息をつき、クジュは木材を積みなおす。
(なんだか今日は多いな、ミス。あーあ)
 クジュは連日の会場設営のせいで疲れているのかとも思ったが、それは違うと思い直す。去年も一昨年も行っている作業だ、だったら今年作業半ばでばてるはずがない。
 先ほどもクラスメイトに疲れているなら休んだほうがいいと忠告されたばかりだったが、今はむしろ体を動かしていたい気分なのだからどうしようもなかった。
 そう、体を動かしていなければある考えが頭をよぎってしまって落ち着かない。
「絶対、無理してるよなぁ。お兄ぃ」
 それは、今現在無理に体を動かしているだろうなという意味だけではない。もちろんそういう意味もあるのだが。別の意味もこめられている。
 危険なことに首を突っ込んでいるんだという、確信。そして何か大きなことを抱え込んでいるんだという予感。
 どうにかしたいとクジュは思っていた。けれど、どうしていいのかわからない。
「はぁー」
 そうクジュは何度目になるか分からないため息をつく、うつむき加減にこれでもかという位。
 その時だった、視界の端にやんわり舞う黒髪が見えた。
「きれい……」
 そうつぶやくクジュその視線の先には黒い布で体を覆う、髪の長い女が立っていた。
 すらっとした腕が伸ばされ角材をひとつ積み上げる。
「辛そうだね、お困りなら手伝うけど?」
 そう、またひとつ角材を積み上げる。
「えっと、あなたは?」
「リク……とでも名乗っておこうかな」
 そうリクは苦笑いを浮かべる、そしてまた角材をひょいと。
「えっと、力ありますね。重いのに」
「敬語なんていい、なれてない感じがするから」
 クジュはあたりを見渡した、この人が偉い人であれば注意を受けるだろうが。本人がいいと言っているのなら本人から注意を受けることはないだろうし、誰にもばれなければ怒られることもない。
 つまりクジュはリクが言ったように敬語が苦手だった、敬語を使わなければならないと思うと、敬語を使うために脳機能の七割を使ってしまって、うまくおしゃべりができなくなるのだ。
「そうなんだよね、私昔から堅苦しいの苦手で……」
 そうクジュは微笑みを返し、そして角材を拾い始める。また同じように積み上げるのは女二人では厳しいように見えたが、リクの作業は早くすぐに元通りになりそうだった。
「ヨット……」
 長い角材を手によろめくクジュ。
 それを音もなく近寄ったリクが支えていた。

 

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