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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<16> 〜モモヨさんと10B少年 そして打開策!?〜

   2015年8月21日  

子どもの頃の、HBやBの鉛筆を使ってなかった?
最年少の固定客・あっくんは筆圧が強くて10Bの鉛筆を使っているのよ。あっくんは礼儀正しくて、きっちりしたいい子。そんなあっくんの決心を聞いて嬉しくなっちゃった。
『モモヨさんと10B少年 そして打開策!?』へどうぞいらっしゃい!

 

モモヨさんと10B少年 そして打開策!?

「百代さぁん! 作文用紙ちょうだい!」
「わたし絵の具!」
「オレ画用紙!」
 真っ黒に日焼けした子どもたちが開け放した引き戸から流れ込んできた。レジを打っていた百代さんは、あんぐりと口を開けたがそのうち喉の奥でくっくと笑った。
 子どもたちはわぁわぁ言いながら、店内を探し回っている。
「ねー、作文用紙ー!」
「絵の具ー! 青と黄色がないのー! ひまわり描けないー!」
「画用紙! えっとね、A3だって!」
 おほんと咳払いをした百代さんは、「はい、これ」と消しゴムとシールを買った子に商品を手渡すと、ぴっと指を入り口に向けた。
「キミたち。夏休み特設コーナーを見なさい。入り口にあるでしょ」
 まさに子どもたちが入ってきたところに、特設コーナーはあった。
 夏休み終盤の今は、黒山の人だかりが出来ている。
 長机二つ分のスペースには、自由研究だの図工だのに関わる文具が所狭しと置いてあった。細っこい手が伸びて、次々目減りしていく。
 わぁわぁ騒いでいた子どもたちも参戦と相成って、百代さんは微笑ましく見守った。
 この時期のモモヨ文具店は、新学期シーズンと同じくらいかき入れ時なのだ。小学校、中学校、高校の生徒が毎日わんさとやって来てはごそっと買っていく。
 静かになりがちな店内が賑わう、いい時期だった。
「みんな、夏休みあと一週間しかないよ。平気なの?」
 だいじょうぶーと合唱が返ってきて、百代さんは苦笑いしてしまった。
 きっと忙しいお父さんお母さんが手伝ってくれるんだろうし、学校でも一週間くらい提出の猶予をくれるんだろう。宿題は出せればいいのだ。
「みんないくつ宿題残ってるのよ」
 わたしあとひとつ、オレみっつ、という声に混じって全部という猛者がいた。ガキ大将の太一だった。上から下まで日焼けして、皮がむけていた。
「全部! 太一あんたなにしてたの」
 さすがに驚いて訊ねると、太一はツンと澄まして「べっつにぃ」としか答えない。小学校高学年になってなかなか生意気になってきたのだ。
 だが、百代さんも負けてはいない。
 へえーと腕を組むとにたりと笑った。

 

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