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SF・ファンタジー・ホラー

幻幽綺譚<8> 霧の中から

   

 添うことを許されない恋人達が霧の中へ入って行く……、浪漫の世界ですな。
 幻幽の世界では、霧の中から出てくるのです。何が?

 

 榊原幸子は、膝まで草に覆われながら、目の前に広がる沼を見続けた。
 疲労で熱がある。
 目眩もする。
 だが、ここで倒れるわけにはいかない。
 もうすぐなのだ。
 空が明るくなってくる。
 夜が終わろうとしているのだ。
 分厚い森林に取り囲まれた沼も、対岸まで見えるようになった。
 碧色の沼の水は、硬く、動かない。
 たっぷりと湿度を含んだ空気が、沼の水面に霧を作っていた。
 鳥の鳴き声が、悲鳴のように聞こえる。
 霧が、動き出し始めた。
「いよいよだわ」
 長いこと待ち続けた瞬間が、もうすぐ来るのだ。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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