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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season1-5

   

 紀山警部の前に突如として現れたのは日本中が知っている名探偵の氷室だった。

 氷室はすでに事件のあらましを理解しつつあった。だが、刑事はいまだに監視カメラになにか映っていないかを調べているだけだった。

 てごねを引いている刑事たちを見かねて、先手先手をすでに調査していた氷室は、身元不明の被害者の詳細を調べ上げていた。

 刑事は氷室という探偵に頭が下がるばかりだった。時間をかければ警察もこのくらいの事件は解決できるだろう。

 氷室の探偵のセンス、視野の広さから周囲の状況把握、そして氷室理解する。そして口癖のように声に出す。

”なるほど”。つまりが事件解決へむかったことを意味する。

 そしてはじまる。氷室名探偵の推理ショー。

 指し示すのは、一人だけ。真実を言葉に、解き明かし、浮かび上がる犯人。

 

「あなたは―」紀山警部がいった。

 紙木は目を丸くさせていた。あまりの驚異に。

「そう、わたしは氷室探偵事務所の代表である、氷室 鉄矢です。この事件が事故ですって? 判断を誤っているのはあなたたちですよ」

「なにを根拠に?」紀山警部は眉間にしわを寄せながらいった。

 紙木警部補は押し黙っていた。

「しっかりと調べたのですか? 本物の捜査というものを、刑事さん?」氷室は指先を向けて刑事を罵った。

「当たり前だ。それがわたしたちの本文だ」紀山は否定されたようで、頭の血が上っていた。

 紙木はなにを非難されても黙っていた。氷室を見据えていた。

「なら、申し上げる。これは殺人未遂事件だということを―」氷室はいった。

 唖然としているのは紀山警部だった。刑事の目で事件を見ていたというのに、完全否定されたのだから。
 紙木は否定されてもなにもいわない。すぐに噛みつくくらいの気性の荒さがあるというのに。

「なら、この事件をこう呼称しよう。”衝動性が生んだ傷害事件”です」と氷室はいった。「被害者の”宮家”さんは助かったようですので、殺人未遂ではなく傷害事件に切り替わるでしょう」

 刑事は驚いた。
「ちょっと待った。被害者の身元がわかったのか、なぜしっている?」紀山警部が勘ぐった。

 探偵氷室はため息を吐きながら、淡々と被害者の男性の身元を話した。

 宮家 道仁(みやけ どうじん 40歳)。不動産業を営み、ほかに経営業も手掛けていた。
 11Fのインテリアフロアで頭部になにかで殴打され出血し倒れていた男性だ。救急車で運ばれ、池袋病院に搬送。とはいっても10分もかからなかった。現在も手術中とのこと。

「超がつく名探偵の敏腕と信頼性を侮ってもらっては困りますな」氷室は不適な笑みを浮かべた。「頭脳明晰な探偵ですよ、お堅い刑事とは脳の仕組みがちがう」

 氷室は病院にすぐに救急搬送された人物の名前が誰か尋ねた。そしたらクレジットカードだけ所持していた。そこにはカタカナで名前が刻印されている。氷室は携帯電話のインターネットの検索で、その人物の名前を入力。次に検索してみると、見覚えのある顔写真を公開している企業の社長と被害者の顔が一致した。名前も同じ読み方ができる。
 同一人物だと突き止めた。

”なるほど”。氷室の口癖だ。

「すげー!」紙木は震えるように、瞳孔のキラメキを輝かせながら探偵を見つめていた。「さすがおれが一番リスペクトしているひとだ。氷室 鉄矢”超”名探偵。憧れのなかの憧れっすよ!」

 紙木が押し黙っていたのは、現実に本物を見たことの歓喜からだった。

「サインください」警察手帳に書かせようとしている紙木だった。

「おい!」紀山は制した。

 氷室も警察手帳にサインをしたことがなかったから、良い機会だとおもっていたが、残念におもう。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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