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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season1-6 END

   

 氷室は物的証拠について、鹿間店長に問われた。が、犯人につながる明確な証拠は、このときまで浮かび上がっていなかった。いくつかの状況証拠はあるが、それは鹿間だけではなくほかの店員でも可能なことだった。

 しかし、その物的証拠を御影の記憶力と観察力によって、発見した。

 凶器は応援の警官が探索中、よってここで判断されるのは鹿間が犯人だという証拠を身につけているかもしれない。と疑うしかなかった。

 それを御影はみつけ、自分ではなく氷室に影から助言した。
 これによって、氷室は解き明かした。指し示す鹿間の犯行である証拠をつきつけた。

 御影はこの手柄によって、おもわぬ展開をむかえた。まさかの出来事だった。

 新たな道が開けたことで、御影は歓喜に満ちていた。

 その分、氷室は危うい事実を背負ってしまう。

「第一シリーズ完結」

 

 氷室は店長に話しかけるまえに、もし証拠のことを問われたら、と悟っていた。しかし、それは自白に近いものがあった。凶器さえみつければこの事件は解決だからだ。その凶器もかならずある。

 しかし、鹿間店長をみたとき、なにも感じなかった。物的証拠というものを彼から感じ取ることはできなかったのだ。
 凶器は隠しているにちがいないが、犯人は無表情だ。ポーカーフェイス。まるで嘘をつくことをこの日のために訓練、習得したような顔をしている。

「追い詰めたときに、逆転されるのが物的証拠を問われたときだ―」
 氷室がそうつぶやいていると、その背後でまさかの助言をした者がいた。

「こんにちは、氷室さん」影のように現れた男の声に氷室は反応した。

「きみは、たしか」氷室は驚きを隠せなかった。偶然たる遭遇に、これは運命といわせたいのか、とおもうほどに。

「はい、御影 解宗です。先日氷室探偵事務所の採用試験を受けて不採用になった間抜けですよ」

「なぜ、ここに?」

「ええ、それはそのー、就職先を探してて…」御影は惨めな自分に私情を話す気分ではなかった。だが、目の前の難問には協力したい衝動だった。

 11階のインテリアフロアに氷室と御影が居合わせた。

 御影はハローワークで目ぼしい就職先が見つからず、昼食をとったあと、買い物をしようと気分転換のために立ち寄っていた。
 氷室はスーツを新調するために7階でオーダースーツを発注していた。

 まるでこの日、この場所でふたりは事件に遭遇して再会するためのように。

「そうか。ならあの野次馬連中と一緒になってわたしの推理ショーを拝聴、眺望しているがいい」氷室は自信満々な顔でいった。

「ええ、そうします。こんな間近でまさかの展開ですからね。期待しています」御影は殊勝な心構えでいた。

 が、御影の期待を裏切る氷室に愕然とする。証拠を見極めきれていない事実を見逃していた。

「氷室さん、詰めが甘いのでは?」御影の意味することを把握していた氷室の背中だった。

 監視カメラの死角で言い合いになった中年の男性が、なにか硬質な物で頭部を叩かれ出血し倒れていた。

 氷室は電話でどういうものが凶器に類似しているか救急隊員に聴取していた。

”傷口からハンマーのような形状ではないかと”、救急隊員はいっていた。

「なるほど」氷室は店内を見渡していた。「そうだよな。それならとうぜんつじつまがあう」

 バックヤードにも視線をにらみつけていた。

「店舗の関係者が犯人ならこの環境や空間に溶け込ませることだってできる」氷室はいった。

 工具類を隠す場所はいたるところにあるということを察した。

「店長さん」氷室が刑事たちのまえでいった。「凶器はどこへ隠しましたか?」

 うろたえるわけではないが、あきらかに動揺が眼球運動によってわかった。
「しりませんよ」

 右上をみてしまった。

 紀山警部や紙木警部補までそれでわかった。

 鹿間店長の体は幾分硬直しているようにわかる。両手は力んでいるように固く握り締めていた。
 動作がおかしい。挙動不審であるのは一目瞭然だ。

「正直にいってください」紀山警部はいった。「もし、あなたがこの店舗内に凶器を隠したのであれば、われわれ警察は隅々まで捜索します。どのみち隠したのならみつかります」

 紙木警部補も眼力を強めて顔を覗いていた。
「ひたいにすげー汗、かいてるよ」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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