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天国からのツイート @1 けえかほおこく

   

中学時代、天才トランペット吹きと呼ばれていた宗像和弘は、現在、定職を失い、日雇い人足の仕事で生活している。
 和弘は、綾南中学校吹奏楽部の同窓会に参加すると、当時、共にアンサンブルコンテストに出場した、高山重徳、後藤淳一郎、河村陽子も来ていたことから昔話になるが、四人のメンバーがアンサンブルコンテストに出場した事には、苦い過去があった。

 

 
 確かに僕たちは同じ門を潜り、同じ学舎で学び、同じ門を出て行った。
 桜の花が散り始めた頃、あの門を潜り。
 真夏の日差しが窓を焼き付けるような教室で学び。
 秋の紅葉が校舎を少しだけ紅色に染めるのが見える廊下を歩き。
 凍てつくような冷たい床に体を震わせ、枯葉の舞い込む体育館を駈けずり回り。
 校庭の砂が春を呼んできた風に舞う頃にあの門を出た。

 教わった事も、受けたテストも、昼飯さえも同じ物を食べていた事に間違いはない。
 だけど人間は、どこかのタイミングで、十人十色になっていく。それを『個性』と呼ぶこともあるが、全てが良い事に捉えられるわけではなく、結局は個性も周囲が判断するもの。
 他人が認めれば個性になるが、認められなければ唯のはみ出し者。
「ああ、俺は、こんなはずじゃなかった!」そんなときは『ゲームオーバー』
「コンテニューしますか?」『Yes』 『No』なんてことがあればどうするだろう。『ああ、もう面倒くさいからいいや。』なんて思うのだろうか。『No』の世界なんて、見たこともないくせに……。
 今どきパチンコ店に流れることが少ない軍艦マーチが聞こえる。そんな古臭いパチンコ店でも、機種だけは新台が並び、開店前からできていた行列が店内に押し寄せ、新台の奪い合い。
 目星い台を陣取り一万円を注ぎ込むとジャラジャラと音を立てたパチンコ台が、始めは軽快なリズムに聞こえるが、玉が切れて補充し、リーチが来たかとおもえばハズレ。
 また玉を補充することを繰り返すうちに、ジャラジャラとした音が不快感になる。
「出ねぇじゃねぇかよ! ボッタクリ!」
 パチンコの台をガンガン叩く男は、宗像和宏。一年前までトラックの運転手をやっていたが、ちょっとした交通違反が多く、その積み重ねから運転免許を取り消しになった為に勤めていた運送会社を退職した。職を失った彼は、毎日の生活を日雇い人足の仕事にて首をつないでいる。
 バブルの時はパチンコ店も床にパチンコ玉がゴロゴロ落ちたりして、何だか景気のよさそうな雰囲気を出していたけど、最近は一円でも無駄の無いようと言わんばかりに、床には綺麗に玉一つ落ちてないパチンコ店。隣に座る、スーツ姿の中年男性がフィーバーを出して笑を浮かべる。その中年を和宏が睨むと、スッと笑を消しパチンコ台に集中した。
『まったく、こんな時間にパチンコなんかやってないで仕事行けよ』
 自分のことは、棚に上げて思う和宏。ちょうど一万円をパチンコにのまれてしまい、和宏はイライラした気持ちで財布の中を見る。財布の中には一万円札が一枚だけ。和宏は残りの金をパチンコ台に注ぎ込むかを迷うが、負ければ無一文のことを考えると、その理性で注ぎ込むのは留まった。
「ああ! もう!」ブツブツと言いながらパチンコ店を後にすると、外へ出て煙草に火を点ける。

 

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