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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season2-3

   

 猫の捜索中に、森谷に電話があり、意外な要請があった。
 別件で調査中の川上探偵の支援要請があったのだ。ただ食事を届けるだけのこと。
 川上探偵は張り込みで動けない。こういうときに後方支援をするのが事務員の役目だが、八王子にいる御影に支援要請があった。

 探偵同士もまたこういうところで協力、助力をするのだ。もっとも第一印象できらっていた御影だったが、川上はそうでもなかった。
 御影に気さくに話をする先輩だった。

 浮気調査をしているが、少しだけつらさや知恵を学習させてくれた。

 だが、過剰なペット捜しをしたがる、動物愛好家でもあった。

 そして、初日を終えた御影には、さらなる試練が待っていた。

 

 御影と森谷は依頼人の自宅へ出向いた。現場検証を簡単にすませ、周囲にペット捜しのちらしや、アメリカンショートヘヤーの猫の写真を近所のひとに見せて回った。

「すみません」御影は聞き込み初体験だ。「あ、あの、えーと、この猫見たことありますか?」

 一瞥する通行人の女性に聞いた御影だ。
「しりません」

「御影くん」森谷はその光景をみていた。「きみはナンパをしたことはないのかね」

「はっ、ナンパ?」御影はナンパなどしたことはない。「あるよ」見栄をはっていることが森谷にはバレバレだった。

「尋ねること、これは探偵にとってはなくてはならない武器だ。これができないと初動捜査がまわらない」

「わかってますよ」御影はおもわぬ課題にぶつかった。「ナンパすりゃいいんでしょ」

「聞き込みをナンパとして考えさせてしまったのはまちがったか」森谷は苦心するも、御影は女性にばかり声をかけていた。

 一時間経過するも成果がない。聞き込みとはあてずっぽうな手法だ。めったに的中するわけがない。

「ダメだ、みつからない」御影はうなだれていた。

「ほれ」森谷が缶コーヒーを手渡した。

「ありがとうございます」大好きな缶コーヒーでうなだれた気分も少し顔があがる。

「気を落とすな、聞き込みなんてこんなものだ」

「情報はないですけど、ナンパは慣れてきましたよ」ニヤリとした御影。

 森谷はたしかに、しどろもどろの最初に比べたら饒舌に聴けるようになっている御影を傍らで見守っていた。呑み込みははやい。そして、よく考えている様子が伺える。

 ひとり聞いたらそこで学習するので言葉の組み立てや余計な単語をいれないようする。
 挨拶、目的、終話。この三段階ですませるように構成を建て直したのだ。

「なかなかやるな。わたしの老いぼれの目が曇っていたようだ」森谷はいった。

「え、どういうこと?」

「いや、べつに」はぐらかす森谷。「聞き込みは対象者を変えるのも重要だ。つぎは女性ばかりではなく、老人やサラリーマンや、子どもにも尋ねてみるのだよ」

「そうか」御影は思考をめぐらせた。対象者を広げながらも、こういう事案にたいして聞き込みのターゲットを選択することも重要だということ。「ちょっと老人にたずねてみようとおもいます」

 森谷は目をみはった。「ほう、その根拠は?」ペット捜しの的を射た対象者だ。

「子どもでもいいのですけど、老人だと裏道やここら一帯の地理にたいしても詳しいはず、猫の集まっているところやよく見かける場所があるのではないか、猫って縄張り意識強いですよね」

「GOOD、正解だ」森谷はいった。「きみは察しがいいな。そして着眼点がしっかりとしている。よく考えて動いているのが傍からみてもわかっていたよ」

「ああ、そうですか。でもよく考えてます。考えて対処手段を自分になりに最良のものを選択してますね」御影は誇ることもなく当たり前にいってみせた。

「なら、期待しよう」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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