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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<18> 〜モモヨさんと謎の美人看板娘〜

   2015年9月18日  

うちの店に美人看板娘がいるって噂が出ているんだけど、あなた見たことある? どうもよく分からないんだけど、美人看板娘目当てで新しいお客さんまで来るのよ。それに、バイトの直くんまで変になってきちゃって。
これってどういうこと?!
『モモヨさんと謎の美人看板娘』へどうぞいらっしゃい!

 

モモヨさんと謎の美人看板娘

 いつぐらいからだろう。
 モモヨ文具店――つまりうちの店に美人看板娘がいるなんて噂が立った。
 まあ、わたしのこと!? なんて思うほどおめでたくはないし、そんな年齢でも容姿でもない。(そう思えない自分にちょっとがっかりしたのは秘密だ)だから、「みんな、なに言ってるんだろうなぁ」程度にしか考えてなかった。
 だけど、その非実在美人看板娘を見に、わざわざ新規のお客まで来るようになったんだから驚いた。そんでもって、すっごい失礼だから頭にきた。
 まずうちの店に来る。ぐるっと店内を見渡す。わたしを見つける。直くんを見る。あれ、違うって顔をする。出て行く。
 これだけ。
「これで頭にこない方がどうかしてるわよ! 別にがっくりするのはいいけど、なにか買って行きなさいよ。わたしと直くん見たんだから。見物料として!」
 むきーっ! とレジの裏でわめいていると、台所からお盆を持った直くんが顔を出した。
「まあまあ、百代さん。お番茶淹れましたから。落ち着きましょう」
 言うと、湯飲みを手渡してくれる。わたしの目は、直くんの白くてきめの細かい手に吸い寄せられた。すらっとした綺麗な手だ。
「直くんの手はいつ見ても綺麗ねえ。手入れとかしてるの?」
 わたしの言葉に、直くんは「なに言ってるんですか」と笑った。
 すっかり馴染んだ直くんは、作業台の前に座った。そこがだいたい彼の定位置。うちに入って一ヶ月。最初に選んだ万年筆はうちのネットショップの看板商品になっている。売り上げもいい。わたしは店舗移転した先でも彼を雇い続けるつもりだ。彼にその気があれば、だけど。
「直くん引き抜いて正解だったわ」
 わたしの言葉に、ぺこんと直くんは会釈した。引き抜いて分かったのは彼は文具のこと以外は物静かな人だということと、非常に料理が上手ということ。わたしがわりと賑やかだから余計に際立つ。
「しっかし寒くなってきたねえ。おこたつ出して正解だったよ」
 そろそろ月世野では深い秋に入ってきて、夏の間中外しっぱなしだった引き戸を入れた。いつ寒くなってもいいようにだるまストーブも出した。
 今まで力仕事も全部こなしていたが、直くんが入ったおかげで彼が引き受けてくれるようになった。ありがたいことだ。

 

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