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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <九>

   

京子をペットショップに送って行った後、俺は警視庁のある霞ヶ関に向かった。そして取調室に入れられ尋問が始まった。俺の言う事を信じてくれるのか……不安が空から押し寄せてくる。

 

 
 翌朝、俺は京子をバイト先のペットショップまで送って行った。

「今日は早番だから二時にあがれると思う。又連絡するから、迎えに来てね~」
 用心の為、俺は京子の送り迎えをする事にした。今は朝の八時半。さて、刑事殿の顔を拝みに行こうとするか……
 エンジンをかけると、次の差路でユーターンし、警視庁本部のある霞ヶ関へ向かう事にした。
 月末の月曜は渋滞の日だ。イライラする気持ちを落ち着ける為に、本来禁煙車の車の中でタバコに火をつけた。煙は一瞬にして目の前に靄をかけ、これはいけないと思い窓を開ける。昨夜の大雨は何処へ行ったのか。何処までも晴れ渡る雲一つ無い澄みきった空。斜めに注ぐ朝日がアスファルトを熱し、なんとも言えないきな臭い匂いが不安をかきたてる。
 大丈夫だ! 俺はやっていない。見た事をそのまま全て話せばそれで済む。
 そう何度も自分に言い聞かせていると、いつの間にか霞ヶ関に到着していた。
 近所のコインパーキングに車を停め、俺は警視庁本部へと足を踏み入れた。
 受付? と云うのだろうか、入った目の前にある部署の女性に声を掛けた。
「すみません、山根さんはいらっしゃいますか? 斎賀が来たと伝えて貰えれば分かると思います」
 女は無愛想にこちらに目をやり、無言で内線電話の受話器をとった。
 暫く椅子に座って待っていると、目の下にクマを作った山根がノソノソと歩いてきた。

「いやぁ、ご足労かけて申し訳ない」
 後頭部をボリボリ掻きながら、皺くちゃのスーツで出迎えた。
「いや、俺って容疑者なんでしょ? 早く俺の無実を証明したくて」
 恐らく徹夜明けなのだろう。それもそうだ。犯人は人間では無いのだから。
 山根は俺を取調室へと案内した。簡素なパイプ椅子に腰掛け、話す気満々の俺に山根は缶コーヒーを差し出した。
「いやぁ、五月だというのに暑いですね。ま、どうぞ召し上がって下さい。これ位の歓迎しか出来ませんが……」
 缶コーヒーのつまみを倒すと、プシュッという音と共にしぶきが目に飛び込んできた。
「うわぁぁ~」
「おっと失礼、最近ハマっていまして。炭酸入りコーヒー」
 さてはこいつ、俺に手渡す前に振りやがったな! 俺にティッシュを渡す山根の顔には何か勝ち誇ったような表情が浮かんでいた。
 山根は机を挟んで向かい側、窓側に座りこちらを向いた。さて! といったように腕まくりをし、話し始めた。
「昨日の午前十一時七分、あなたは消防へ連絡をしましたね。その時の被害者の状況を教えてください」
「その前にいいですか? 今から僕が話す事は全て本当の事です。疑いの念から俺を観るのは一旦止めて、素直に話を聞いてくれますか?」

 

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