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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十>

   

名取のお陰で容疑は晴れた。しかし明らかになるラットと大ネズミの関係。そして何故服部がラットを狙うのかも。小説RAT、第二部の始まりです。

 

 
 名取の家の前に車を停め、後ろを振り返った。
 白のクラウンから山根と金丸が降りてきて、辺りを不審そうに見渡している。それもそうだ。荒れ果てた家々、空地、そんな中にひっそりと、その怪しげな雰囲気をかもしだしている洋館。
 壁に巻き付く蔦や葉が、生温い風に揺られ、まるで館そのものが蠢いているかの様に見える。
 俺は敢えて、インターホンを押さずにゴシック調の大きな門の前に立った。

「ここがあの、名取博士の家なんですか?」
 何やら不安げな顔で俺に訪ねた。
「大丈夫です。もう直ぐ門が開くはずです」
 そう言った途端、門は大袈裟な音を立ててゆっくりと開いた。俺は自信満々に後ろを振り返って、此方へ。と、いったように手を差し出してやった。
 正面の階段を、さも不安げに登る二人の刑事。その後を追う様にして付いて行った。
 この扉を開けるのか? といったような仕草を山根がとった。俺は無言で頷き、先へ進むように催促した。
 扉を開けた瞬間の二人の目は、よもや騙されたのではないか? とうたぐってる様でもあり、ただその異様な光景に驚いている様でもあった。

「階段、壁沿いを慎重に歩かないと奈落の底へ落っこちちゃいますから、気をつけて下さいね」
 金丸は額に滲む汗を腕で拭い、壁を手で掴みながらゆっくりと踏み出した。
「うわっ、なんだ! 濡れてる」
 壁一面に生い茂ったコケに驚く山根と金丸。その姿を観てコッソリと笑う俺。
 螺旋状の階段をゆっくりと下る事、五分。何がどうしてこんなにも時間が掛かったのか? それは二人の刑事の用心によるものだった。それは刑事特有の警戒心。というよりかは、ただビビっている様にしか見えなかった。
 ようやく最下層に着いた。いつもの様に蝋燭が揺れ、俺たち三人の影を時に大きく、時に小さく壁に映し出すのであった。

 

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