幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

不思議なオカルト研究部 第ニ話 腕が揺り起こす 前編

   

 緑ヶ丘はふっと笑い、言った。優しい姉のようだった。
「本当は入部したいと思っているのに、反面、オカルトに触れ続けるのが怖いんだわ。今までの人生観が全て崩れてしまいそうで――。そうよね、オカルトに触れ続けていれば死生観が変わるかもしれないし、物理法則が信じられなくなるかもしれない。今まで学んできた人生が、価値観が、オカルトによって一変するかも。そう思ったら、怖いわよね」

 始めたばかりの一人暮らし――女子大生の部屋に出没する幽霊とは!?

 

 土曜日の正午過ぎ――必修科目の講義を終えた山田直也はベンチに座って缶珈琲を飲んでいた。ベンチは学び舎の中心に大きく口を広げた中庭の、隅ではあるが日当たりの良い場所。二回生の石動美也が言うには、この大学の七不思議の一つとして数えられているらしいベンチである。
「友達のいない一回生しか座らないベンチ……か…」
 直也は毎週のようにこのベンチに座って缶珈琲を飲む。それが功を奏したか、はたまた不運を招きよせたか、先週、ここに居たことを切欠にオカルト研究部の面々と知り合うこととなった。
 先週はその三人に振り回され、絶品の蕎麦屋で妙な経験をする羽目になった彼――その後、部長の柳田邦彦に「入部するか?」と問われ、その件は保留にしてあった。現在、彼はオカルト研究部の仮入部員である。
 そんな彼が今日も再びこのベンチに座ったのは、そのサークルに顔を出すか否かと思い悩んだからで、迷っているうちに、彼の脳内は先週の出来事でいっぱいになった。ベンチのこと、石臼のこと、石動美也のこと、そして行き着くのは、この世の中に不可思議な、超自然的な現象が存在しているのか否かということである。彼はそのようなことに興味を持つこと無く十八年間生きて来たが、先週の出来事は実に不可思議で、彼の心を掴むには十分だった。
 そう、彼は気になり始めていたのである。オカルト、怪談、七不思議、妖怪、その他諸々――。
「う~ん……」
 直也は腕を組み考える。逆に理論的な思考でこのベンチの仕組みを解き明かせないモノだろうか? あの石臼が割れたことと、老翁が倒れたことに因果関係は無かったと証明できないだろうか? と。
 そんな彼に声が掛けられる。見た目とは裏腹に落ち着いた、直也の中では「姉」というイメージを音にしたような、と表現できる声だった。
「何してるのよ、仮入部員君」
 見上げると、彼の前には金髪のワンレングスロングに赤いカチューシャを差した派手な女が立っている。
 オカルト研究部の三回生、緑ヶ丘翠だった。
「あ、緑ヶ丘さん、どうも――…あの、緑ヶ丘さんはこのベンチの話、知ってますか?」
「そりゃもちろん。七不思議の一つでしょう? うちのサークルの専門分野よ」
「ですよね。あの、単刀直入に聞きますけど、信じますか? 土曜の昼に、友達のいない一回生しか座らないって」

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品