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SF・ファンタジー・ホラー

死神の鏡身 八話

   

 それは運命的な出会いだった、本来であれば交わることのないはずの二人、そして真実が知れればその関係は粉々になってしまうと知りながら、死神はその少女に近づいた

 

 
「だって、アキラ、がんばってるんだもん。私も手伝いたいなって思うでしょ?」
 普通こういう荷物を運ぶ仕事は治安維持の人間か男子学生がやるものだ。けれどそれを手伝っているのはいろいろとわけがある。
 クジュは今までアキラにくっついて露店の設置や間隔をはかったり、テントを張る仕事をしていたが。その作業中にぽつりと言ったのだ。
『舞台設置の進行状況が、予定より遅れてる……。最近、舞台設置の人出が足りないんですよ、困ったものですね……』
 クジュはアキラが疲れてきているのを知っていた。日に日に徐々に徐々に元気がなくなっていくのを見ていた。だからクジュはこれ以上アキラの心配になるようなことを消してしまいたくて、そして。アキラの前で元気に手を挙げたのだ。
「私がやる、私ならできるって。その時は思って、アキラのことごり押しで説得しちゃった。けどこんなんじゃだめだね。足手まといにしかならないよ、はぁ」
 そしてクジュはため息をまた小さくついて、そしてぼそりと言った。
「はやく大人になりたいな」
 そんなクジュをみて、リクは手を伸ばす。
 クジュがそれに気が付いて顔を上げるとあわててリクは手を引っ込めた。気まずそうにあたりを見渡す。
「そうね、確かにこんな有様じゃね。危なっかしくてずっと見ていないといけないもの」
 その言葉にクジュはまたショックをうけうなだれる。
「やっぱり、私じゃだめなのかな」
 そう話を続けながらもリクが黙々と資材を片付けていく、最後の一本をつみ終りクジュに向き直った。
 クジュは自分は何でここにいるのだろうという情けなさにも似た気持ちにどっぷり浸り、恨めしそうにリクを見る。
「アキラが言ってた」
『まだ、クジュさんは小さいから、できないと思うのだけど』
 アキラはあの時困った顔をしていた。たぶんこのことを危惧していたのだ。たぶんあの時リクがかばってくれなければクジュは怪我をしてた。
「はぁ」
 そうまたため息、クジュはうずくまる。
「……クジュ」
「なに?」
 脱力しきり力の入らない首をかくかくと回して、クジュはリクを見上げた。
 リクが心配そうにクジュの様子を伺っていた。その顔は夕日の金色に染め上げられていて、黒い髪が、錯覚だろうか少し銀色に見えて、それが誰かに見えた。
「この人たちはなんでこんなに頑張ってるんだ」
 リクは周囲を見渡しそう言う、クジュにはわずかにリクのほほが紅潮しているように見えた。
「それはお祭りだからだよ」
 そこには、依然たくさんの人たちが走り回っていた、できかけの骨組みと機材だけがさらされた出店がぽつぽつと立ち並び。普段視界をさえぎるもののない広い平原に、それらがずっと続いていく作業用の行燈明りにぼんやり照らされる色鮮やかな、けれど古ぼけた出店たちはひどく非現実的に見える。
 普段見慣れない光景のそれが、祭り特有の熱を帯びた空気も手伝ってクジュの心を上気させる。
 直に夜になる。クジュは思い出していた。去年のこの祭りの光景。
 がなる売り子。はしゃぐ子供たち。寄り添い歩くカップル。甘すぎる飴の味とひんやり冷たい水風船。頭にしみいるかき氷の冷たさ。
 走り回り、声を張り上げ。決して立ち止まることなく顔を生き生きさせながら。クジュはただただこの光景に溶けていく自分の思い出をただひたすらに感じていた。
「この祭りはいったい何を祝ってるんだ?」
 リクがぽつりと言う。視線は周囲の人々に向けられたまま。
「祭りはね、六つあって、今回は伝説を語り継ぐためのお祭りなの」
「伝説?」
 クジュは遠くにある、横たわっている水色の物体を指差す。
「この世界の創世記。水子とカイリュウ。二人がどうして離れ離れになってしまったか。そんな話」
「…………」

 

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