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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season3-2

   

 御影は雲田と会話を試みた。どんな人か、信頼できる人か、命を預けられるのか、探偵はどこでもどんなときでも調査しているときはそれらが関わってくる。

 御影のように人助けや困っていることを解決する探偵をめざしている。一方、雲田探偵は真逆に位置している。

 雲田は人間が嫌いで、警察が解決できないこと、犯人を処刑台に送ることで、苦痛や苦悩の顔を影で見ているような探偵だった。

 御影が恐怖心を少なからず感じた。

 現場調査を開始する二人。渋谷駅で、依頼人がいう身代金受け渡し場所の光景を観察した。
 すでにこの事実はニュースでも報じられていた。

 スクランブル交差点で一時、とんでもない惨事を引き起こした。

 雲田は御影にお守りを手渡した。

 どういうつもりかわからないが、御影はその奇妙な優しさに失笑していた。

 御影に事件のあらましをしっかりと把握させるため、雲田はタブレットパソコンで報じられている記事を見せる。

 とんでもない事態に、さすがの御影も引いていた。

 

 雲田は御影を引き連れるように歩くが、そうではなかった。いつのまにか、御影の視界から消えた。
「ちょっと、雲田さん、行き先教えてくれないなら、おれの前を歩いてくださいよ。なんでおれの背後に隠れるんですか?」

 雲田はいった。「そんなつもりはない。ただ、おれは主役になるつもりはない。いつだって二番手でいい。それがおれの性格にもあっている」

「どういう意味っすかそれって」

「たいしたことでない。気にするな」雲田はしかたないようすで、御影の前方を歩く。もしくは平行して歩く。

「雲田さんて、探偵になってどのくらい経つんですか? いま35歳ってきいてますよ」御影は世間話のつもりで話す。

「まだ8年だ。27のときになった。おれはきみとちがって探偵社に乗り込んできたりしなかった。しっかりと教育的な学校を出ている」

「え、そういうのがあるんですか? しらなかった」

「探偵社で検索したようだね。探偵になる方法で検索すれば、学校が出てくるよ。まだまだだね、きみの調査能力も──」雲田は鼻で笑ってみせた。

「あざけった感じですね。雲田さん、ちょっと陰湿な感じっすよ」御影はどこかいけ好かないタイプだと感じた。

「好意的に思う必要はない。おれはおれだ。きみはきみだ。おたがい信じる道を進めばいい。それが人間関係に含めても同様に。好き嫌いはだれにでもある。おれは世間一般的に”人間”が嫌いだ」雲田は無表情でいった。

「じゃぁ、なんで探偵なんて? あら探しや困ったことに助力をするのが探偵ですけど」
 御影は許せない犯罪を野放しにはできない。そのために自分ができる最大限に発揮できる場所、それが探偵だと自負していた。

「それか、おれは人助けなんてのは性分ではない。むしろ、警察が解決できない事件を解決し、犯人を処刑台に送りたいだけだ。それによって、勝手に救われたと思うひともいるだろう。だが、不幸に見舞われる犯人の家族や友人知人といったひとたちにも不幸が見舞われること、その苦痛や困惑な顔をみるために是が非でも証拠をみつけてやろうって思ってしまう」

 無言の御影。

 雲田は歩行を止めて、御影の顔を覗く。「たのしいだろ、他人の不幸な顔をみるのって」ニヤリと最後に笑みを見せた。

 微笑や笑顔を見たことがなかったが、この男の笑顔は卑屈で根暗なところにある。自慰的で自傷的な笑顔。恍惚な笑顔を浮かべるのは、どこか闇を抱えているのだろう。

「ちょっとやべーな、こいつ」御影はとんでもないパートナーになってしまったことを五分で後悔していた。

 とぼとぼと先を歩く雲田に、距離を置いて歩く御影だ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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