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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十三>

   

 再び姿を現した大ネズミに俺は怯んでしまった。急いで山根たちの居る十七階へ行くと、呑気に欠伸を吐く金丸が出てきた。そしてその後信じられない事件が発覚した。

 

 
 それから何日か経ったある日。空は晴れ渡り、ベランダに干してある掛け布団が、太陽の香りを吸っていい匂いがする。グッと深い深呼吸をして、今日一日をどう過ごそうか考えていた。
 京子をバイト先に送って行った時に言われた。「洗濯物、お昼には取り入れといてね」と。京子の可愛らしいパンツをドキドキしながら見つめていると、背後に感じたことの無い異様な気配がした。

「おい、お前がラットをかくまって居るんだろう。隠しても無駄だ。いずれ迎えに来る。それまでせいぜい仲良くしとくんだな」
 
 ハッと背後を振り返ると、例の大ネズミが毛を逆立て威嚇している。心臓が破裂する様な眩暈に襲われた俺は後ずさりすると、急いで部屋の中に入り扉とカーテンを閉めた。特殊ガラスに変えているのだから、破られる心配は無い。どうしようかと考えていると、もうそこに大ネズミの姿は無かった。前にも思ったが、ここは十八階だ! どうやって登ってきたのだろう? いや、そんな事よりもだ。奴は言葉を発した。俺に話しかけてきたではないか! ラットは? と辺りを見回してみると、床でピンポン球相手に遊んでいる。
 今回はあの大ネズミが来た事にラットは気付いていない様だ。ピンポン球によじ登り、転がり落ちるのが妙に気に入っているらしい。
 そうだ、山根に連絡を……俺はラットをすくい上げ音楽室のケージに放り込んだ。ラットは何が起こったか分かっていないらしく、ケージに張り付いて「出せ!」と催促している。
「ラット。ごめんな、すぐ戻ってくるから大人しく待っててくれないか? 戻ったらまたピンポン球で遊んでやるからな」
 ラットは渋々ケージのガラスから離れ、俺に背を向けて寝そべった。
 音楽室に鍵をかけ、部屋を飛び出し階段を使って十七階へ降り、山根達の部屋のドアを叩いた。
 ドアノブがゆっくりと回り、扉が開く。大きなあくびを吐きながら金丸が出てきた。

 

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