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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十四>

   

俺はもう何もできない。こんな猟奇的な事件ばかりに合い、気が動転していた。そんな俺に山根はキツイ一言をかける。俺は路頭に迷い、気が付けばいつもの所に来ていた。

 

 
「ダメです! 山根さん。これは犯人の警告ですよ。テレビで見た事がある。生首を置くのは警告です。これ以上関わるなという。だから、これ以上踏み込めば山根さんや金丸さんだって狙われかねない。俺はもう協力できません!」
 俺は次にこの姿になるであろう山根を想像すると涙が込み上げてきた。こんな残酷な死を誰が受け止められるんだろう。少なくとも俺には無理だ。もう無理だ。耐えられない。
「なら斎賀さん、貴方は貴方の大切な家族のラットを敵に渡す事が出来ますか?」
「えっ?」
「忘れないでください。貴方がラットを手放せば、この事件は終わる。簡単な事じゃありませんか? 人一人の命は地球より重いと良く言います。たかがペットの命、そのせいで三人もの犠牲者がでた。貴方が拒めば拒むほど犠牲者が出る。それは貴方の大切な彼女、京子さんかもしれません。貴方は守り切れるのですか? 耐えられるのですか?」
 山根は真剣な面持ちで遠く晴れ渡る空を見上げ、独り言の様に呟いた。その背中に背負った見えない大きな荷物が何なのか気になった。
 ラットを手放す……そんな事……もし京子が……もう自分一人で頭の中を整理する事が出来なくなってきた。どうすれば良いんだ。足の感覚が無くなり、俺はその場で崩れ落ちてしまった。ラットが居ない? 京子が居ない? じゃぁ俺は何を糧に生きていけば良いんだ? 
 花壇の側を蝉の幼虫が歩いている。必死に一歩を慎重に選んでいる。暫く歩いて幼虫は何かを見つけたかの様に足を止めた。そしてゆっくりと土を掘り始め、みるみる内に土の中へと姿を消した。
 俺も土に埋まってしまいたい……

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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