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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第二章「雪銀館到着、そして」 2の2

   

さあ、パーティで交流しよう……と思ったところ、蒼野はさっそくハブられてしまった。
同じく、ハブられ気味で気まずそうな人物たち、ゲーム会社の夢倉(ゆめくら)や検視官の古山(ふるやま)といった面子らと楽しくやり過ごそうとするのだが……。
さて、本日の目玉であるワインも配られたところ……。

 

 
 パーティは既に始まり、グループが分かれて行った。
 まず、カウンターのグループ。
 カウンターでは黒井さんがバーテンダーをやっていた。そこに大江戸先生、宮沢先生、小塚先生がピザなどを食べながらビールやカクテルを飲んで談義していた。
 次に、女性グループ。
 キッチン寄りのラウンドテーブルの一角で女性たちが集まっていた。奥さん、水波先生、双馬さんがごはんものにおかずを食べながら、わいわい騒いでいた。
 最後に、残り物グループ。
 俺とさきほど顔を合わせていなかったゲストの二人。古山さんと夢倉さんだったかな?
 俺たちはお互いに一言も交わさず、ひたすら飲み食いしていた。でもこのままではまずいよな。
 俺は軽く会釈をしようとしたが、二人とも睨んできた。
 古山さんは四十代ぐらいの筋肉質そうな大柄の男性。まだ髪は黒く、オールバックにしている。どこぞのエージェントみたいな、いかついスーツをまとっている。
 夢倉さんは三十代ぐらいの中肉中背でそこそこ大柄の男性。髪は茶髪に染めていて、肩まで延び、パーマをかけているみたいだ。ハイキングにでも行くかのような冒険的な洋服をまとっている。
 なんなんだ、この二人は。さっきから妙な殺気を感じるのだが。
 ともかく、このまま三すくみで睨み合っていても面白くない。俺から自己紹介をした。そして二人に自己紹介をしてくれるように無理やり頼んだ。
 古山さんがやっと口を開いてくれた。
「はじめまして。古山勘一郎(ふるやま・かんいちろう)と言います。大江戸先生とはドラマ撮影のときの友人です。先生のご招待とご厚意により、本日と明日、会議に参加させてもらいます」
 え? ドラマ? この人、俳優なの?
「失礼ですが、何のドラマでしょうか? ご職業は俳優ですか?」
 一瞬、沈黙があったが、素直に答えてくれた。
「『検視官・古川勘三郎』のドラマのことです。私は、俳優ではなくて、検視官をやっております。先生がドラマのもととなる小説を書くときに、現場の検視官として取材されました。それ以来の付き合いで、仲良くさせてもらっています」
 は? なんで、本物の検視官がここにいるの? その検視官役の俳優で十分でしょう?
 俺は話を合わすことにした。
「私は、長野県警の刑事部で警部の地位にある検視官です。ちなみに昔は医師もやっておりましたので、死体の解剖もできる刑事ということで勤めております」
 すごそうな人だね。まあ、いいや。
 ところで、『検視官・古川勘三郎』とは、大江戸先生が原作となる小説を書き、それを宮沢先生がドラマの脚本化した、刑事ドラマの人気番組。古川勘三郎は警視庁の敏腕刑事で、死体の解剖を得意とする検視官。この検視官の死体解剖によって、迷宮入りになってしまうような不可能犯罪に科学のメスが入り、たちどころに事件を解決してしまうという話。
 このドラマがヒットしたわけは、検視官とその仕事が綿密な取材によってリアルに描かれていたことや、主演俳優などのキャスティングが豪華で効果的だったことがあげられている。
 まさか、古川勘三郎が実在していたとは。しかも名前を少しいじっただけの古山勘一郎だったとは……。

 

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