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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十五>

   

俺は道を選んだ。京子とラットと笑って暮らせる道を。
二人で夕食の買い出しに出かけた時、レジの店員が京子に話しかける。その人物がまた意外な人物だった。

 

 
 京子を車に乗せると、俺達は近所の大型スーパーへ買い出しに出かけた。六月の梅雨空は暫く出稼ぎにでも出ているようで、てんで雨は降りそうもない。しかし蒸し暑い外気は、車内の温度差でフロントガラスに靄をかける。DEFをつけようか、しよまいか悩んでいる内に目的地に到着していた。
 スーパーの自動ドアが開くと、まるで雪女が凍える吐息を吐いているかの様に肌寒い。腕を手のひらで片方づつ擦り合わせながら緑色のカゴを手に取った。京子は意外と平気そうに押し車を運んできてカゴと一体化させ、どっちが押すかのジャンケンをし、押すのは俺の役目となった。
 心地よい京子の鼻歌はスーパーに流れる意味不明の音楽と共鳴し合い、不協和音を作り出す。誰かこの訳の分からない音楽を止めてくれ! せっかくの京子の鼻歌が……
 そんな京子に今日の生首事件を知らせるのは酷である。京子のランダーブルーな心を汚してしまうかもしれない。極力、事件の事には触れないでおこう! と思ったのだが、京子が合い挽きミンチを手に取った瞬間、吐き気を催した。でもなんとかグッと我慢して笑顔を取り繕った。
 挽肉とトマト、レタス、アボカド、玉葱をカゴに入れ、ビールとワインを探しに行く。勿論、アボカドは俺が入念に柔らかさを吟味して選んだものだ。きっと容易く皮が剥けるだろう。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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