幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

プラチナ・フィンガー〜女王陛下のダイヤモンド〜<1>

   

 本文よりの抜粋:
 電車の振動に合わせて、手のひらが蠢く。
「痴漢は犯罪行為なのよ」

 

 羽田空港へ行くには、JRで浜松町へ行き、そこからモノレールに乗るルートが普通である。
 京浜急行なら、蒲田で乗り換えることになる。
 車で行ってもよいのだが、空港へ向かう道路は、渋滞することが多い。
 空港へ着く時間が不確定である。
 人と待ち合わせているなら、時間が不確定なのはまずい。
 そういうわけで、高橋美由紀は、浜松町へ向かうJRに乗っていた。
 かなり混んでいる。
 普段使わない路線である。
 通勤時間ではない午後の今、この路線は混むのが当たり前なのかどうか、高橋美由紀には分からなかった。
 ハンドバッグ以外に、大きなスポーツバッグを持っているので、ドア付近では迷惑になる。
 車両の奥へ進み、スポーツバッグを網棚に載せると、つり革に掴まった。
 駅のホームに立っているときの高橋美由紀は、
 濃紺のパンツスーツ姿のキャリアウーマン――。
 深紅のスポーツバッグを持つのが相応しい鍛えた身体――。
 女盛りそのものの、張りのある胸と尻――。
 このような表現がふさわしい女性である。
 だが、満員電車の中では、若い魅力ある女性も中年の黄昏れた男性も一緒くた、であった。
 高橋美由紀は、窓の外に流れる景色を見ながら、スポーツバッグにも注意を払っていた。
 大きなバッグを、混雑した電車の中で盗もうとする馬鹿はいないであろう。
 だからといって、目を離してよいものではない。
 バッグの中には、人前で見せるべきではない物も入っているのだ。
 電車が駅に停まり、また、大勢の人が乗り込んできた。
 さらに混む。
 高橋美由紀は、尻に人の手を感じた。
 鞄を提げて真後ろに立てば、手の甲が尻の位置と同じになってしまう。
 混雑した車内では、仕方のないことだ。
 高橋美由紀は、立つ位置を少しずらし、出来るだけ他人と接触しないようにした。
 どうしても接触するのは、肩と背中だけ。
 電車が速度を上げた。
 振動も大きくなる。
 振動に合わせるように、尻に、また手が当たった。
 これだから満員電車は嫌い、と高橋美由紀は嘆息した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

プラチナ・フィンガー〜女王陛下のダイヤモンド〜< 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話第9話

コメントを残す

おすすめ作品

44口径より、愛を込めて episode16

プラチナ・フィンガー〜女王陛下のダイヤモンド〜<3>

見習い探偵と呼ばないで! Season12-10

見習い探偵と呼ばないで! Season9-6

見習い探偵と呼ばないで! Season13-14 END