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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season3-5

   

 探偵に依頼してきた清文氏の記憶について話し合うが、どうも状況がわからなかった。

 鑑識が清文氏の部屋をくまなく調べてその存在すら見つけられなかったというのに、マジックのように月曜の朝、清文氏はベッドで目覚めたという。
 この矛盾に、警察は解くことができない。

 現場にはかならず証拠がある。それが事件の糸口のきっかけになるが、今回は”証拠がないのが証拠”と雲田はひらめく。

 そして、事件の犯人像まで探りはじめる。すると、清文氏の人間関係について、警察は調べていたが、どのくらいの範囲を調べて、聴取をしたのかと雲田は鋭くついた。

 だが、御影がさらなるヒントを雲田に耳打ちした。

 清文氏という人間像に、恨みを持つものが犯人。
 それは日常の会話から恨みをかっていたということだ。

 さらなる聞き込みが開始されるのだった。

 

 巽警部は、身代金は奪われたのち、連絡はいっさいなかったと話す。

 奪われただけで息子は返ってこなかった。両親は騙されたと泣き崩れる。
 だが、その翌日の月曜の午前中、息子から連絡が入って事実が明らかになる。

「どこにいたんだ?」と父親に問われたが、息子は覚えていなかった。

「気づいたら今朝だったんだよ、なにがなんだか、わからない。三軒茶屋の自宅にいる。俺がまさか誘拐されたなんて信じられない」息子はいった。

「警察にも相談して、身代金も奪われた。昨日のことだ。もうニュースでもやっている。渋谷駅付近はパニックだ。こんかいのことで」父親は泣き入りそうな声でいった。

 母親がひたすら電話する父親の横で、代わってほしい、息子の声が聞きたい、とせがんでいる。

 清文は落胆していた。「いったいなにが起きたというんだ」

 刑事から話を聞いたが、このさき犯人追跡をする。と強い意思をこめていった。
 両親はもういい、といった。息子がもどってきただけでじゅうぶんだ。1000万円も警察にやる、どうでもいい。と捜査打ち切りを望んだ。

 清文は、警察に懇願した。この二日間、なにをしていたか、しりたい。最優先に調べてほしい。

 これは却下された。犯人追跡が最優先です。おそらく犯人を逮捕すれば必然と、記憶を掴めるでしょう。

 こんなぬるいことをいわれたら、自分でどうにかするしかない。そこで、探偵社に依頼してきた。

「依頼人の自宅は捜査したの?」御影はきいた。

「それは渋谷警察署から鑑識がしらべた。だが、なにも出てこなかった。土曜の昼間だ。でも、その月曜に息子の清文が鑑識がしらべた自宅のベッドから起きて普通に土曜の朝だと思っていたんだぞ、信じられるか?」古来警部がいった。

 御影はうなずいた。

「依頼人が探偵事務所で話したのとおなじのようだな」雲田が矛盾がないかしらべていた。

「だが、そのトリックめいたことならわかっている。その話はしていないのか?」加賀谷警部補がいった。

 雲田と御影は顔を見合わせる。
「いや」

 加賀谷はニヤリと頬を吊り上げた。

 清文には、注射痕がった。熟睡している金曜の夜中に犯人に打たれたものと思われる。薬用は睡眠薬、清文は夢の中で意識が遠のいていくのを思い出したといった。ぶっとぶような目まいに意識を失っていくような感覚に浸ったといった。注射痕は左腕に、注射の針のあとが、滲む血が肌に残っていた。

 探偵も、注射痕があるのはきいていたが、成分まではわかっていない。

 そこから浮かぶひとつの仮説。それが睡眠薬の霧状のスプレーを目覚めるたびに噴きかけていた。丸二日の記憶がない理由は眠りにつかせていた。というのが一度の注射痕で推察した。

「なるほど、そういうことなら納得できるし、そのへんだろうと思っていた」雲田がいった。

「ほんとうか?」三舟警部補が茶々を入れた。

「ええ、清文氏が探偵社に依頼しにきたとき、相談した事務員の女性が、対応したときに睡眠薬の投与が原因とかないですか? と尋ねてもいた。それはないかもしれない。とこたえていた」雲田は佐伯のことを話していた。

「そうか、それで清文氏は急に思い出したのかもしれない、といったのか。夢だとずっと思い込んでいた。何度も起きるが、すぐに眠ってしまった。だから眠りが浅く日ごろの疲れが原因だと思っていたと」巽警部がいった。

「つながったな。やはり睡眠薬の散布が濃厚になってきた。ということは、犯人は三軒茶屋の清文氏の自宅に忍び込んでいる人物だということだ。清文氏が住むマンションには監視カメラはないのか?」雲田がいった。

「しらべた」三舟がいった。「だが、なにも映っていない。あやしい人物はいない。清文氏にも見てもらったが、顔見知りはいない。それに証拠がないんだぞ。荒らされた形跡がない。おかしいだろ」

「唯一、ベランダに通じる風呂場の小さな窓枠のネジが最近いじられた形跡があるくらいだが、たいした根拠にはならない。そこから侵入しても清文氏を連れ出すのは物理的にむずかしい。気を失っている清文氏の体には注射痕以外の傷はないのだからな」加賀谷がいった。

「たしかにそれは変だな」雲田は考えている。

 清文の自宅に侵入した方法、そして、誘拐したとなるとそれなりに目撃情報やなにかしろの痕跡があるはず、それがまったくない。

 雲田はひらめいた。
「もしかしたら、証拠がないのが、逆に証拠ということか」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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