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ラブストーリー

伝えない

   

 降水確率二十パーセントはまんまとはずれ、雨が降り出した放課後。
 天気予報を信じて傘を持ってこなかったので、大雨の中飛び出していこうとしたのだが、後ろから引っ張られ、倒れそうになる。
 だが、寸前のところで何かに支えられた。

 

 
 二人とも気がついていた。お互いにお互いをどう思っているだなんて。わかりやすすぎた。一たす一が二になるくらい、明確で。
 日が沈まって、水色だった空はすっかり暗色になっていた。月は見えない。広辞苑並みに厚い雲が、星々もまとめて自分たちの後ろに隠してしまっているのだ。
 しかも、雲は泣いていた。天気予報は降水確率を二十パーセントと言っていたのだが。どうやら天は毎日行われるお決まりの予言を覆してやろうと試みたらしい。おかげで渡辺亮太郎(わたなべりょうたろう)は傘など持ってきてはいない。もちろん、カッパなんてものの持ち合わせもない。

「くっそ、マジあり得ねぇ」

 玄関口でたたずみ、空を見上げる。ため息混じりに吐き出したこのつぶやきは、雨音に紛れてかき消された。
 振り返って廊下の時計を見る。十九時を回っていた。
 玄関の先に広がる道を睨む。バケツをひっくり返したかのように、という言葉がぴったりの盛大な降り方だ。水たまり同士が連結し、道全体が池のようになっている。
 渡辺は頭に鞄を乗せた。彼の家は学校からさして遠くない。歩いて十分とかからぬ距離だ。スタンディングスタートの構えを取り、今にも走り出そうと一歩を踏み出す。
 だが、それは後ろから制服へかかった引力によって、阻まれた。バランスを崩し、あわや転倒かと思われたが、途中で止まった。
 渡辺はいつの間にか閉じていた自分の目をゆっくりと開く。その大きさは平生通りに開かれた一瞬を挟み、拡大した。

 

-ラブストーリー


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