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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode10

   

 大雅の記憶に隠された事実は、残酷そのものだった。

 本格ミステリー!!
 44口径より、愛を込めて

 

「その中でもリーダーかと思われる人物が、突然笑いながら闇雲にマシンガンを連射しました。俺の前にいたカップル二人の頭に弾が直撃し、俺の後ろの窓にも弾が当たりました。俺はカップルの血と飛び散った窓硝子から恋人を庇う様に抱きしめながら、その場に座り込みました。恋人は俺を突き飛ばし、盾にする形で割れた窓から這い出て、難を逃れました」
「……酷い……」
 ケンさんの隣で大雅の言葉をメモしていた陽太君の手が止まり、彼がそう呟いた。ケンさんが自制を要求する視線を陽太君へ送ると、彼は「すいません」とだけ発言し、仕事に戻った。
「続けて」
「恋人の行動を認識する間も与えられず、今度は他の男達が闇雲にマシンガンを連射し始めました。その時点で……情けないんですが……俺は腰を抜かしていて、動くことが出来ませんでした。客達がどんどん死んでいく中、俺の後ろの窓が割れている事に気付いた客が、俺目掛けて飛び込んで来ました。俺も逃げなきゃと窓枠に手を掛けたんですが、動けない俺は結果的に逃げることも出来ず、逃げようとする客の邪魔にしかならなかったんです」
 大雅が、テーブルの下で私の手を握った。震えていた。彼の記憶は、私に打ち明けた時以上に、鮮明になっていた。私は、震える大雅の手を握り返した。
「俺には、沢山の罵声が降り注がれました。人数はわかりませんが、何人かが俺を乗り越えようと上に乗ってきたり、俺を退かそうと服を引っ張ったりしてきました。俺は人に揉まれ、圧迫され、真っ暗な中で呼吸が出来なくなっていました。意識が遠のき始めた頃だと思います。ガスが撒かれたのは。その様子も、状態も、人に揉まれていた俺にはわかりません」
 あぁ、そうか。大雅の暗所恐怖症は、これが原因だったんだ。
 大雅の話が終わり、暫し沈黙が流れた。彼のPTSDが発症するのを心配して、私は繋いだ手に力を込めた。
「ありがとう、大雅君」
「……いえ……」
 大雅が、力なく返事をした。
 そして、ケンさんの質問が始まる。ケンさんが、机の上である大雅の前に三枚の写真を並べた。どっかで、見たことある顔触れだ。
「では、大雅君。事件当日、この三人のうちの誰か一人でもいい。見かけた記憶はありませんか?」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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