幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

死神の鏡身 九話

   

リクという少女の話をしよう、彼女がどんな人物なのか、彼女はいったい何なのか。

 

 
 数日後の話、またいつものように学校を終えたクジュは祭りの準備に取り掛かっていた。その休憩時間のこと。
 小さな休憩場にあふれる老人たちの話を訊きながら、コップに熱いお茶が注がれお礼を言った。
 クジュは老人たちに人気があるので、こうして老人たちに可愛がられる。
「おいしいね、このお菓子」
 そんな風に談笑しながら、会場を見渡す。
 祭り会場の設営の仕事は佳境に入っている、ほぼ完成した露店の群は一直線に並び、無限に続くようにさえ見えるその光景にクジュは達成感を感じていた。
 会場自体は、中央にある部隊を中止に八方向に向けて同じように露店がずらっと並んでいる。
 かなり大がかりな祭りだった、何せ一年で一番大きな祭りなのだから。
 クジュはやがてお茶を飲みほし、お礼をいい立ち上がる。休憩場を出たところで伸びをした。
 体にほんのり残る虚脱感が心地よかった。
「クジュ……」
 完全にクジュが無防備になっていたその時、背後から声がした、それはあまり聞き覚えのない声、けれど聞きなれた声のような錯覚を生む、クジュは振り返る、そこには露店を物珍しそうに眺める少女がいた、リクだった。
「今日も来たんだね」
 そうにっこり笑うクジュに、微笑み返すリク。
「約束だから」
 けれど、そんな笑顔はすぐに消え、リクはクジュの後ろの何かをじっと凝視し、動きを止めた。
「どうしたの?」
 首をひねって振り返るクジュ。その視線の先をあわてて追った。
「アキラ?」
 そう、視線の先にはアキラがたっていた。
「クジュさん、お疲れでしょうが、もう一息です、私と頑張りましょうね」
 アキラの微笑み、そして無表情。アキラはクジュに挨拶するとすぐリクへとみなおり、そして意味深に言う。
「そして、久しぶりですねリク」
 直後、リクは駆け出した。
 一瞬だけ見えた顔が、苦々しい苦痛の表情に彩られていた。
 クジュは驚いて振り返り、リクの後ろ姿に声をかける。
「待ってよ! リク!」
 しかしリクはその言葉を無視した。とまることはなく、全力で走るその少女を、クジュは見送るしかなかった。
「ただ、今どこに根城を構えているのか知りたかっただけなんですけど……。森にでも住んでいるのかしらあの子」
「あの子……って。アキラ、リクを知っているの?」
 アキラは黙ってうなづいた。
「彼女は、もうちょっとおとなしくする癖をつけたほうがいいですね……クジュさん」
「質問に答えて、アキラ」
 そうアキラをじっと見つめるクジュに、視線を合わせようとしないアキラ。
「それではクジュさん、また学校で」
「まってよ、アキラ」
 それを呼び止めるクジュ。服の袖をくっと引く。
「どうかしました?」
 そう視線だけをクジュへ向ける。その目からは何の感情も見て取れなかった。
 何かがおかしいとクジュは感じた。
「疲れてるよ、アキラ……」
 アキラは指を口に当てて静かに笑った。
「いえ、あなたたち兄弟にばれるだなんて。それほど疲れているなら休む必要もあるかもしれませんね」
 そういたずらっぽくアキラはいうと、クジュの頭を撫でた。
「クジュさん、お祭りに私を誘ってくれましたね」
 そう、クジュは久ぶりにアキラと祭りへ行きたい、そう話を持ちかけていたのだった。最後に祭りに行ったのはシトルが死ぬ前、幼かった日、シャオとシトルがグングン先へ行ってしまいおいて行かれそうになるクジュを、アキラが手を引いてくれていたのを覚えている。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第38話 星のない夜空と湧き上がるもの

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第9話 生誕式 (3)

にゃんと素敵な東雲市役所猫支店 芦葉ハヤトの報告書 その①

マスクエリア 第五覆面特区〜三章 光か影か(6)

サクリファイスⅡ 完結編11