幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十七>

   

取り敢えずマヤを山根の元へと連れて行った。そこで驚愕の事実を知ることになる。マヤは間違いなく狙われている。そこで山根警部が持ちかけた陽動作戦。果たしてそれがうまいこと行くのであろうか……

 

 
 俺は直ぐに階下の山根を訪ねた。勿論、マヤも一緒にだ。内心マヤを家にかくまいたく無い。と云う気持ちもあり、マヤが狙われる確率の無い事を山根に証明して欲しかった。マヤは山根に俺達に言った事そのままを伝えた。
 山根の無精髭がこの事件の難航を語っている。今までの山根の清潔感は微塵もなく、浮浪者の様に髭を蓄え、老人の如く背を丸めていた。
「山根さん! どうしたんですか? 何処かお体でも悪いんですか?」
「いやいや、斎賀さん。心配には及びませんよ。これも捜査の一環です。白髪の老人が辺りを彷徨いていても誰も不思議には思いません。寧ろ、交替で警護している私服警官の方が逆に変質者扱いされたりするんですよ。まったく、バランスとは難しい物ですな」
 今の山根を見ていると、死んだ祖父を思い出す。そこら中にタバコの吸殻を投げ捨て、コンビニの前の自販機でワンカップを一気飲みする。必ず底から二ミリ位の酒を残してゴミ箱へ放り込む。早飲み最高記録は二・六秒だった。隣に居た同じ性分の人間から拍手を受けたくらいだ。そんな祖父は俺にとって何故か誇らしかった。
「マヤさん。本名は雅夫さん……名字は何とおっしゃるのですか?」
「日野雅夫です。今はマヤですけどっ……それが何か関係があるのですか?」
 マヤはさも不審そうに山根を視ている。今までの山根の壮観な姿を見てい無いからだ。今の山根に説得力は無いに等しい。だがその山根の後ろから金丸がぼんやりとした表情で姿を現した。
「何ですかい? この女は」
 ざまぁみろ金丸! こいつは男なんだよっ……
「えっ! 貴方は?」
 金丸が眠そうな目を擦りながら無愛想に答えた。
「俺は警視庁捜査一課巡査部長の金丸です」
 マヤの表情は見る見るうちにメルヘンに変わっていった。小蝿の湧く古臭い家屋から新築のプール付きの大豪邸を見たかの様に。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品