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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season3-6

   

 渋谷地下開発に関わっている人材すべてに聴取が必要となった。
 仕事だけしか関わりがなく、すぐにすがたを消しても不思議に思われない。

 委託業者の派遣社員だ。すぐに消えては新しい人手を確保する。その日の人数さえいればいい。

 清文氏とはどこかで会話をし、清文のプライベートを聞き出したと思われる。その人物を捜すことになる。

 出勤名簿を委託業者に確認したが、結果はおなじだった。誰も清文氏と関わりをもっていなかった。が、派遣社員のひとりが有力な発言をした。

 ついに御影たちは犯人の背後まで迫る。

 

 警官の聞き込みで誰がなにを、どんな発言をして、清文氏を知っているか、という質問だけを投げた。

 その内容を、御影たちは検証する。

「ほとんどが知らない者が多い。末端の作業員、その他社員はまったく関わりはない。世間話をした者もひとりもいないとみえる」巽警部がいった。

「そうだな、だからといって上役連中に話をしても、日曜日の身代金受け渡し時間のアリバイが全員ある。地下の作業員という線はないんじゃないか」古来警部が今度は指摘した。

「仕切り直しだ。とんだ検討違いな推理でしたな、名探偵さん」三舟が御影にいった。

 見習いといわれるより遺憾に感じた。揶揄したように名探偵呼ばわりされるのは我慢ならなかった。
 だが、しかたがないこともある。この推理はまちがいだったのだから。

「落ち込むな。おまえの考えは徒労だったかもしれないが、いい着眼点だ。次につなげよう」雲田がいった。

 大地がその光景をみていた。ホワイトボードに関係者を記してあるが、その役職に目をつけた。
「すみません」

「なんだ」三舟がにらみつける。

「あ、ああわ、あ」大地は慌てる。

 雲田が三舟がこちらをむかないようにいった。

「ありがとうございます。建設作業って、全員じゃないですよね。聞き込みしたひとたち」

「どうかな、なんでそう思う?」巽がいった。

「警官の話では全員だといっていたが、駅員ってことか?」加賀谷がいった。

「いえ、建設途中ですから、駅員も入り込んでいないと思います。ただ、その部分には建設業者のみが出入りしているというわけではない。派遣業者から委託された人員もいるってことです」大地は指摘した。自分も何度も派遣社員としていろいろ出向していた。そういう人材派遣についての仕組みは把握していた。
 こういう人員が必要な場合はかならず委託業者に委ねているのが、通常といえる。警官の聞き込みは建設業者の社員のみだった。

「おい、いまから、その委託業者や外部からの派遣社員の取り引きがあったか調べろ、そして出入りしていたらその業者を聴取。名簿もあるだろ。そして、日曜にアリバイのない者がかならず一人いるはずだ。なにしろ、日曜は作業していないということだからな」古来警部が明確な支持を出す。

「日曜は作業がなかった?」御影がいった。

「そうだ。休暇だったらしい。聞き込みしていたときに、地下の作業スケジュールには、休日だったことが、さっきわかった」古来がいった。

「そうか、ならもう確実に、おれたちの推理はそこを指している」御影がいった。

「委託業者はノーマークだった。われわれは、地下で働く者たちがどういう雇用契約で勤務している人材かを把握しきれていなかった。盲点だったな。これじゃ、犯人の思う壺だ」雲田が指摘する。

「自分たちの落ち度を反省するまえに、先手を打つ狙いができた。これで詰みになるはずだ」加賀谷がいった。

 再度、聞き込みを開始。委託業者からきている派遣社員の名簿を入手し、従業員一人ひとり聴取した。
 結果は変わらなかった。

 アリバイのない者は委託業者には数名いる。一人暮らしが多かった。肉体労働につく者だから、休みの日は自宅で一人で寛いでいる、というのが理由だ。彼女がいればまだいいのだが、ほとんどがろくでもないやつらばっかりなのか、彼女が誰にもいなかった。

「派遣社員というのはろくでもないやつらばっかりだな」三舟が見下した。

 大地は自分派遣社員として活動していた時期があったため、自分を否定されているようで初めて三舟警部補を鋭い目つきでみた。

 清文氏と会話をした者はいなかった。憎むような話もない。
”関わりがないから”と誰もがそういった。

 だが、一人だけ浮上した。
「え、このひとがそういったの?」御影は、警官が聴取する一人から聞いたことに、疑いを持った。

「ほう、やっと炙り出したな」雲田も悟った。

 大地も無言だが、うなずいていた。

「どういうことだ?」古来がいった。

「要は──」御影が話すところを雲田が遮った。

「そんなことより、本人はきょう出勤しているのも、確認している。直接問い質せばいいでしょ」雲田がいった。

 刑事たちは不愉快そうな顔だが、うなずいて承諾した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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