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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十八>

   

作戦会議に俺は立ち会うことになった。それは予想もしてなかった陽動作戦であった。理屈は理解できた。だが、本当に成功するのか? 俺の心の中での葛藤が収まらなかった。

 

 
 作戦会議には俺も出席する事になった。例の生首事件の事もあり、マヤは京子の居る俺のうちへ帰らせた。
 ついこの間までは薄暗く汚かったこの部屋は、山根の激怒もあってか、とても綺麗になっていた。床に散りばめられていた雑誌やゴミは跡形もなく消えている。
 一番下っ端であろう森刑事が押入れの奥から会議室にある様な赤茶色い木目の長方形の大きな折畳み机を出してきた。それに続いて高崎が人数分のパイプ椅子を引きずって来て机を囲むように並べた。
 一応玄関から一番遠い上座の席に山根、金丸が座り、その横に俺。向かいに高崎、森、廣瀬、吉高。と云う順に座った。
 廣瀬と吉高と云う刑事は生首事件の時に山根班として一緒に行動してたやつらだが、廣瀬は自らの発言行為を一切しないと云う変わり者である。俺も何度か話しかけた事があるが、「はい」だの「そうですね」だの在り来たりの返答しか返ってこない。背はかなり高くて一八〇センチ位あるだろう、このチーム内で一番デカイ。なのに内気で引っ込み思案なのだ。いざとなったら一番の戦力になりそうなものの、実際のところどうなのかは判らない。
 吉高刑事はわりと話しやすく、正義感あふれる理想の刑事って感じだ。いかにも体育会系で、日本傳講道館柔道の師範らしい。柔道家特有の耳介血腫がある。惨殺された松本とは高崎程では無いが、親しかったらしく、松本の死を悔やみ、事件解決にとても熱心だ。

「さて、諸君。早速だが今回の陽動作戦について、何か案はあるかね?」
 山根が鬱蒼と蓄えた髭を指先で弄りながら皆に問いかけた。
「はい。先ずは日野さんと金丸巡査が今までの事件現場からそう遠く無い地点、見晴らしが良く、人通りの少ない場所。つまり地図で云うこの地点です」

 

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