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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode11

   

 妙に大雅に喧嘩腰になる陽太。そして、それが妙に心配になる魔夜。
 そんな矢先に、ケンさんがバーベキューをするというので、お邪魔することになるのだが。

 本格ミステリー!!
 44口径より、愛を込めて

 

「ねぇ、ケンさん。やっぱり、ガセの線で追った方が良くないっスか? モヤモヤ気持ち悪いのはわかりますが、事件もヘロインも賢木田達の事も、一旦全て別に考えた方がいいと思うんです」
 ケンさんが、溜息を吐いた。
「既にその線でも、追っているんだ!」
「……すいません、出しゃばり過ぎました」
 母親に叱られた子供の様に、陽太君は小さくなった。
 少し疲れた。と言うか、混乱してきた。私は深呼吸して、体勢を少し崩した。
「俺、ちょっとトイレ」
 大雅が席を立ったので、そのまま休憩になった。
 休憩中の会話は無かった。ケンさんは難しそうな顔で考え事をしているようだったし、陽太君も大雅の証言をメモした内容を見ながら、考え事をしているようだった。
 私だけが、蚊帳の外。そんな居心地の悪さを感じていた。
 暫くして大雅が戻ってきたのだけれど、彼は大層疲れた顔をしていた。
「次は、魔夜ちゃんの番だ。陽太に話した内容も含めて、順番に話してください。一昨日の襲撃について」
 ケンさんより、聴取は再開される。私はひと呼吸置いてから、話し始めた。
「一昨日、大雅を病院へ連れて行ったのが夕方、カウンセリングや薬の投与やらで時間が掛かって……帰宅したのは夜の七時半前後だったと思います。大雅は薬で意識が朦朧としていたので、先に家に入れてから車を停め直そうと思い、玄関先に駐車しました。病院帰りなので、車道側が助手席です。私が先に降車し、彼を降ろそうと助手席のドアを開けた時、約一五十メートル後方から静かに何かが近付いて来るのに気付きました。振り向いて見ると、セダン型ハイブリットカーだとわかりました。真っ暗で詳しく見えなかったのですが、単なる通行車だろうと大して気にしていませんでした。その車との間合いが半分位まで縮まった時、気味の悪さを感じて再度振り向きました。それが何故か解らなかったので暫く見ていたら、街灯に照らされて車の姿が確認できました。ナンバーもフロントガラスも窓ガラスも、全部真っ黒なシートみたいなのが貼ってあったんです。しかも、時速二十キロも出ていないような超徐行運転をしていました。嫌な予感がしたので、目を凝らすと、運転席窓が十五センチ程開いていて、隙間から黒い筒の先っぽが出ていたんです。車が私の横に並ぶか並ばないかの所で筒は更に顔を出し、それが銃だと気付いて私が助手席のドアを閉めるのと同じくらいのタイミングで、発砲されました。黒い筒はサイレンサー、銃はGlog26で、間違いないと思います」
 ケンさんからの質問が始まる。
「魔夜ちゃんは、病院で大雅君の投与された薬が何か、説明を受けましたか?」
「私達の暴露療法時に使われる、アモバルビタールだと聞きました。いつもよりカウンセリングが長かったです」
「カウンセリングの時間は、それぞれどこで何をしていましたか? 話した内容も含めて、教えてください」
「私は、婦長の松野さんと診察室にいました。日向野先生の病院の診察室には、別に診療室と呼ばれる部屋があります。いつもそこで松野さんが暴露療法を行うのですが、この日は大雅が日向野先生と診療室に入って行ったので、私は松野さんと診察室の方で待っていました。松野さんに、大雅が記憶を取り戻した経緯について説明していました」
 続いて、大雅が答える。
「俺は、日向野先生と診療室にいました。アモバルビタールを飲まされたのですが、いつもより量が多かったです。それを言ったら、いつもが少ないんだと言われました。あと、栄養剤だからと点滴をされました。意識が朦朧としてきて、浮いているような気持ちの良い感覚の中、いつもの誘導尋問……魔夜の言う暴露療法が行われました。意識が朦朧としていたのであまり内容は覚えていませんが、多分ケンさんに先程話した内容だったと思います」
「ありがとう。では、大雅君の記憶が呼び戻されたのを知っているのは、私達以外では日向野先生、松野婦長のみですか?」
 ケンさんは、事務的に質問を続けていく。
「あと、大雅の恋人の玲奈さん」
 敢えて“元”と付けなかったのだが、大雅が文句ありげな視線を私に寄越した。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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