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天国からのツイート @2 つぶやくこと

   

 綾南中学校吹奏楽部の同窓会に参加した宗像和弘は、翌日、派遣のアルバイトに出た。
 アルバイトを終えると、携帯電話に一通の知らせが来る。それは、中学時代登校拒否になり、その後、自殺した裕輔からのツイートであった。

 

 翌日、和宏は日雇いの派遣アルバイトに出勤した。
「派遣の宗像です。はい、これから現場に向かいます」
 朝七時、自宅を出ると出勤報告の電話を派遣会社に入れる。昨日飲み過ぎたせいか酒がほんのり残っていた。
「やっぱり、早めに帰っておくべきだったな」
 駅に向かう途中の公園に立ち寄り顔を洗い、そのままガブガブと水を飲むと、顔を拭くタオルなどもなくTシャツで拭う。
 夏場の公園の水が温く、冷めぬ二日酔いの気分を更に重苦しくさせる。髪についた水を犬のようにブンブンと首を振り飛沫を飛ばすと、再び駅まで歩き出した。

 今日の派遣は引っ越し現場。日曜日だから世間は休みの人が多いが、引っ越しセンターにとっては繁盛日。場合によっては派遣でも午前と午後で別の現場を二件回されることもあるくらいだ。
 日曜日で人気の少ない静かなホームに電車が来ると空いている車両の椅子に座り、頭痛で締め付けられるような二日酔いの頭をグリグリと押してみる。窓に反射する光が眩しくて暑い。 
 直射日光が脳につき突き刺さるようであり、頭の中を低音楽器がスタッカートの四分音符を刻むように、重いリズムがズン・ズン・ズンと響く。
『現場に着くまでに治まるかなあ……』そんなことを考えていると、ポケットの中の携帯電話が鳴り出す。確認すると淳一郎からのメールだった。
『昨日、酔っていたみたいだったけど、ちゃんと家に帰れたか?』
「余計なお世話だ」と呟きながらも一応、丁重な返信をする。
『大丈夫です。心配かけて悪いな』
 考えてみれば、吹奏楽部の同期で音楽とは無縁の生活をしているのは自分くらいだと、和弘は思う。
 淳一郎は音大を出てから、一流とは言えなくてもプロのオーケストラに入団しているし、重徳も楽器リペアの仕事をしながらアマチュアバンドで活動している。
 陽子も中学校で音楽教師をしているから、皆が中学時代の経験を今の生活に生かしている。

 和宏は中学を卒業すると、吹奏楽で全国大会出場常連校である『関東実業高等学校』に音楽特待生として入学した。
 吹奏楽部に入部すると、部員達の目標は校内選抜のセレクションで一軍になり、夏の吹奏楽コンクールに出場することである。
 部員の多い年には三軍まである大人数の中で、一軍に上がれるのは大半が三年生と有能な二年生位。しかし入学した時点で高校生の技術や感性のレベルを超えていた和宏は、顧問である有村靖夫も期待の新入生として一軍入りを考えていた。

 

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