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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <十九>

   

朝目覚めると、ラットの様子がおかしい。まるで老犬のように痩せ細っている。名取のジジイが言ってた月検診か。俺は大急ぎで名取の元へとアクセルを踏み込んだ。

 

 
 朝、いつもの様に額に違和感を感じ目覚めた。ラットはどうも俺の軽い頭が気に入ったらしく、ケージには入らずにいつも同じベッドで眠る。寝る時にはラット用の枕に乗せて、おやすみを告げるのだが、起きるといつの間にか顔によじ登りデコの上でピンク色の腹を広げる。
 だが今日はいつもと趣向が異なった。ラットは寝ぼけていたのか、それとも俺を起こす為なのか。俺の額を一所懸命に掘っていた。ラットの細い爪が俺の額を掻き毟る。痛いと云うよりかは、くすぐったい。

「ははははっ! なんだよラット……くすぐったいよぉ。わかった、分かったって! 起きるからぁ」
 そうラットに言い聞かせながら、無造作にラットを手に取った。
 異様な感触が伝わってきた。なんだろう? 無骨……と云うよりかは、皮……かわっ?
 俺は目に付いた目ヤニを取ることも忘れ、ラットを抱え飛び上がった。まだ俺の手の中でウトウトとしているラットがくすんで見える。良く目を凝らすんだ……なっ、ラットの皮膚は骨に寄り添う様にたるんでいる。そうか! これがジジイの言っていた月検診なんだ。
 俺はラットの可哀想な姿を京子やマヤに見せたく無いと云う事で、京子が愛を込めて作ってくれた朝飯をあえて自室で摂った。
 京子も自分の親友が来ているせいもあって、あまり俺に構ってくれない……仕方が無い。朝食を済ませ、さっさとジジイの所へ出向くとするか。そう思い歯を磨いていると、ラットはガリガリの容姿で俺の肩によじ登り、同じく歯を磨く素振りを真似するのだ。
 こんな姿になってまでも、俺に愛嬌を振りまいてくれるのかぁ。なんて親孝行なやつなんだ。漫画だと俺の目には横に細かい斜線が入っているだろう。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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